今回は、前回に引き続きビーフについて!
実際の例を交えて、ヒップホップにおけるビーフやディスりの歴史についてお話しします。
攻撃的な楽曲の裏に秘められた想い。
ビーフを通じて分かる、ヒップホップに重要な文化へのリスペクトの姿勢。
今回はそんなお話をします。
(そもそもビーフって何?という方は前回のブログをご覧ください!)
あのビーフ。もう冷めちゃった?
2025年6月。
ヒップホップシーンを大きく揺るがしたNENEさんによる、ちゃんみなさん(+Hana)、SKI-HIさん(BMSG)に向けたディス曲。
歌代ニーナさんも参戦したこの抗争は日本ヒップホップ業界内外で大きな話題となりました!
しかし、流石21世紀、スピードの時代。
「ここまで大きいビーフなら2,3ヶ月くらいホットな話題でいてくれるだろう」という僕の思いとは裏腹に、アツアツの争いは早急に沈静化。
なので、今回はちょっとした昔話を聞く程度でお読みください🙇
ちゃんみなV.S. NENE?!日本のビーフ事情
深い歴史を持ちヒップホップの大きな要素を担うビーフ。
日本でも大きなビーフが行われていたのをご存知でしょうか??
(経緯のご説明長くなります)
ラッパーのちゃんみなさんプロデュースによるガールズグループ「HANA」。
彼女達が商業的成功を収める中、日本ヒップホップシーンを代表するNENEさんが、ちゃんみなさん、HANA、そして彼女達の事務所に向けてディス曲をリリースし話題になっています。
ディス曲を出した理由として挙げられたのは、HANAの曲のリリック(歌詞)に、以前NENEさんが出した曲のリリックと類似する部分が含まれていたということ。
とっても平たく言うとパクリ疑惑。
そして、NENEさんの曲を連想させるリリックを無断で曲に入れたこと以外にも、そもそも、ちゃんみなさんやBMSGがヒップホップカルチャーを「商業的に利用」してるのではないか?という点も指摘されていました。
コアなヒップホップV.S. 大衆的なヒップホップ。
日本中のヒップホップファンが固唾を飲んで見守る中、それに対するアンサーソングを出したのは、ちゃんみなさん達の事務所のCEOであるSKI-HIさん。
卓越したラップスキルとアツい想いを披露し、応戦。
ビーフはさらに複雑化。
どちらが勝ったのかファン達の間で様々な意見が飛び交いました。
その後、SKI-HIさんのアンサーソングに対するアンサーソングを出したNENEさんに対して、「そもそも発端となったディス曲は自分の曲のパクリだ」と主張する歌代ニーナさんがディス曲を出すという大混戦に!!
第三勢力の登場で更に燃え上がると思われましたが、この曲が一連のビーフにおける最後の曲となり、騒動は終息したと見られます。
商業V.S. 文化?
商業的成功を収め、日本におけるラップの立ち位置を押し上げることに成功しているちゃんみな、SKI-HIやHANA。
それに対して、ヒップホップシーンを担い、文化的な側面を重んじて、ヒップホップにプライドを持っているNENE。
NENEさんは、BMSG側はヒップホップを商売道具として利用し、文化的側面、ヒップホップシーンを尊重出来てないのでは?と指摘しています。
こうした商業V.S.文化の構図は本場アメリカでも度々見られます。
アメリカのヒップホップシーンで絶大的な人気を誇るトップアーティストのDrakeとKendrik Lamar。
商業的に大きな成果を収め、名声を手に入れたDrakeさんに対し、同じく名声を手にしているものの、ヒップホップやその礎を築いてきた黒人の歴史や文化をより重視するKendrik Lamarさん。
両者の舌戦は大きな話題を呼び、海を超えた日本でも多くのヒップホップファンが注目していました。
まとめ
ビーフの争点になりがちな商業V.S.文化。
あまり馴染みがない人だと、「ビジネスなんだからお金を稼いで当然では?」と思うでしょう。
しかしながら、ヒップホップは他ジャンル以上にただの娯楽や商売道具に留まらない文化的重要性を含んでいるのです。
時に厳しい生活のオアシスとして、時に抑圧に対抗する平和的武器として。
時に自分自身、そして自分のコミュニティへの啓発のツールとして。
ヒップホップは黒人コミュニティにとって大きな影響となり、日本でもその役割や重要性は意識されて来ました。
ビーフという日本人にあまり馴染みのない事柄。
一見、単なる攻撃的な要素に見えるものの、これは音楽を通した自己啓発、引いては音に乗せた悪の是正であると言えます。
自分の正しいと思う事のために、大切なヒップホップの文化を守るため。
ラッパー達は今日もディスり合い、高めあうのだと思います。
ただし、一つ断っておきたいのは、「ヒップホップの文化を重んじている」と称して、排他的になるラッパーやファンが一定数いること。
そうした人々は、あくまでラッパーにキャラクターとしてのヒップホップっぽさ(例えば、「壮絶な生い立ちを持ってない奴はヒップホップじゃない」のようなやや偏った属性)を求めているだけで、肝心なラップスキルや、文化や歴史に対する理解が二の次な人が多いです。
なので、そうした偏った声によってヒップホップの間口が狭まってしまうのはとても悲しいと個人的に思うので、ここまで読んでいただきヒップホップに少しでも興味を持った方は、そうした声は一旦スルーしていただき、ヒップホップをカジュアルに聞き始めて欲しいです!
そしてラップを実際に始めたい方は、外側(ヒップホップっぽさ)だけでなくぜひ内側(技術面)も鍛えていただきたいです!
中が生焼けだと残念なので!ビーフだけに。
ということで長くなりましたが、本日はここまでです!読んでくれてありがとうございました。