WACCA MUSIC SCHOOL

講師ブログ

毎月講師会、研修、発表を行いより良い教え方を共有し、成果の感じられるレッスンを行えるよう努めています。

泣く歌じゃなく“進む歌”――『オン・マイ・オウン』再解釈

こんにちは!

東京の音楽スクール

《WACCA MUSIC SCHOOL》

ミュージカルコース担当の迫田です♪

今回は『レ・ミゼラブル』の名曲「オン・マイ・オウン」について、

歌うための役作りという点で解説していきます。

「嘆き」に聞こえる歌でも、歌う時には嘆いちゃいけない!?

ミュージカルが好きな人、ミュージカルを勉強する人なら1度は聞いたことがあるであろう「オン・マイ・オウン」

レミゼラブルの舞台で、エポニーヌのこの曲に泣いた…という人は多いのではないでしょうか。

私もその1人です!

この曲は、一見すると「失恋した悲しみを表現する嘆きの歌」だと思われているかもしれません。

しかし、ミュージカルを勉強している生徒さんにはこの前提をぜひ今一度見直してほしいのです!

この曲、よく分析してみると

実際は「孤独の中で自分を見失わないために、歩み続けるための歌」なのです。

一体どういうことなのでしょうか?

ミュージカル曲を歌いこなしたいと思った時、絶対に必要となるのは「役作り」です。

完璧に楽譜通りに歌えても、役作りの工程がなければ

「上手いけど、なんだかエポニーヌとは遠いなぁ…」

と受け取られてしまいます。

役作りの出発点は「前提条件を具体化」することです。

つまり、

エポニーヌはいつどこにいて、

どんな状態で、

直前にどんなことがあったのか。

それによって彼女の心の変化はどうなったのか。

こういったことを丁寧に押さえていく

と、表現の芯が定まり「歌の中でやるべきこと」が選び取りやすくなります。

逆に、この前提条件を整理しないまま歌の練習を進めてしまうと、

芯のぼやけた表現になってしまいます。

エポニーヌはいつ、どこにいるのか

いつ→1832年 雨の残る夜更けから未明

どこ→人気の薄いパリの路地

この状況をしっかりと理解して、エポニーヌの置かれている環境について想像してみましょう。

6月といえど、雨が降っている夜間の気温は低く、体は濡れて冷えています。

肩が縮こまったり、こわばる感覚があるかもしれません。

雨が靴に染み込んできたり、上着がだんだんと湿ってくるような感覚もとても有用な感覚です。

明かりの少ないひっそりとした夜道。

ボコボコと盛り上がる石畳が続き、雨と相まって体力を削がれていく中、決して近くはない距離を1人きりで歩いていかなくてはいけない。

エポニーヌはそんな状況の中にいます。

このブログを書いている今は真夏ですが、

歌う前にはあなたの体と感覚をエポニーヌの体や感覚とリンクさせて歌い始めるように心がけてみてください。

また、時間帯にも着目してみましょう。

夜遅い時間から未明までの時間は、何も気にせず大声を出せるという環境ではないですよね。

しかもパリでは暴動が今まさに始まろうとしている最中。大きな声を上げると、不審に思われたり巡回兵などに見つかってしまうかもしれません。

ソロ終盤では心の叫びとなった歌が盛り上がりを迎えますが、歌の始めからいきなり音量を上げすぎるということのない設計にしていきたいですね。

この時に、音量を抑えようとすると言葉が落ちて届かなくなることがあります。

言葉は前に投げつつ、自分に向けての言葉であるという点を忘れずに、いい塩梅を探ってみてください。

歌う直前の出来事がカギ

歌に入る直前の出来事も、とても大事で無視できない項目です。

エポニーヌが思いを寄せるマリウスは、コゼットに心を奪われて猛烈に恋をしています。

マリウスがしたためた手紙をコゼットの元へ届けてほしいと言われ、彼の頼みならとエポニーヌは苦い思いを飲んで手紙を預かります。

エポニーヌはマリウスを愛しているのに彼にとってはコゼットが1番大切で、

エポニーヌのことはまるで「そこにいても、目に入らない」かのよう。

その現実を突きつけられ、心理的にも物理的にも孤独になったエポニーヌは

今にも心が砕け散ってしまいそうな状態なのです。

しかし、彼女にはやるべきことがあります。

マリウスから頼まれたことを遂行するために、孤独でも歩き続けなければなりません。

【今にも消えそうな心の炎を消さないために】

そして、

【朝まで歩くということを完遂するために】

エポニーヌは想像の中にマリウスを創るという行動を始めるのです。

まとめ

ここまでを分析し、理解して自分自身に落とし込んでからやっと

「1人でも2人だわ」

という歌詞を歌い出すことができると思ってください。

音と歌詞を把握して、はい歌った!

では、ミュージカルの歌=芝居の中の歌

として成立しないのです。

ひゃー、険しい道のり!!

と思った方もいるかもしれません。

そう、自分自身が俳優として歌う時には綿密な準備と戦略を練ること、そして弛まぬ努力が必要です。

これ以外にも役作りで深掘りするべき項目はまだたくさんあるのですが、

それはまた別の機会に。

WACCA MUSIC SCHOOLでは、

頼もしい講師陣が豊かなテクニックであなたの「歌いたい!」をサポートします。

あなたの目標ややりたいことに合わせて伴走していける講師が多数在籍していますので、

気になった方はぜひ無料体験レッスンにお越しください!

それでは、今日も

楽しんで歌っちゃいましょう♪

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