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【鼻腔共鳴・口腔共鳴・咽頭腔共鳴】どれがいいの?そもそも必要なの??

ボイストレーニングではよく「鼻腔共鳴」「口腔共鳴」「咽頭腔共鳴」という3つの共鳴腔が話題にあがります。

どの共鳴腔が一番良いのか?そもそも使い分けるものなのか?

この記事では、それぞれの共鳴の特徴やメリット・デメリットを解説しながら、あなたの声に合った使い方を見つけるお手伝いをしていきます!

鼻腔共鳴・口腔共鳴・咽頭腔共鳴の正体

まずそれぞれの共鳴がどういうものなのかについて話していきます。

最初に結論をお伝えするので、ざっくりと以下のように覚えてください。

・高周波数のキンキンした響き→鼻腔共鳴

・太くて深いボワボワした響き→咽頭腔共鳴

・それぞれの特性を合わせ持つ→口腔共鳴

これだけ覚えておけば、ほとんどのボイストレーナーや歌関係のご友人などともしっかり話が合わせられます。

例えば「鼻腔共鳴ができていないね」とボイストレーナーから言われたら、「自分の声には高周波数帯のキンキンした響きが足りていないんだな」と脳内変換すれば良いのです。

変に深く考え過ぎて、漢字の通り「〇〇腔」を響かせようとは思わないようにしてください。

漢字の意味の通りに考えてはいけない

音は空気を伝播して響いていくので、例えば鼻腔共鳴を漢字の意味の通りに実行しようとすると、鼻の方に息を通していかなくてはならなくなります。

そうすると「鼻声」になってしまって、いわゆる鼻腔共鳴的な声とは全く違う声になってしまいます。

口腔共鳴、咽頭腔共鳴に関しても、声は必ず咽頭腔・口腔を通って出ていくので、「咽頭腔と口腔で声が響いていない」ということは、厳密に考えるとあり得ません。

そう考えると、漢字の意味通りの口腔共鳴・咽頭腔共鳴は、声が出せる人なら全員できているという話になってしまいます。

このように、漢字の意味通りに「〇〇腔共鳴」を考えてしまうとどんどんおかしな方向に進んでしまうので、先述した通り響きの種類のことを言っているのだと思っていただくのが1番実践的だと思います。

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共鳴は喉仏の位置で決まる

声の響きは「〇〇腔共鳴」よりも、「喉仏の位置」でコントロールするのが1番わかりやすく、実践的です。

試しに、「千と千尋の神隠し」に出てくるカエルのモノマネをしてみてください。

そうすると、喉仏が自然と上がって、普段よりも声にビリビリとした鋭い響きが加わるかと思います。

この響きは、いわゆる「鼻腔共鳴的な響き」に他なりません。

ボイストレーナーに「鼻腔共鳴ができていない」と言われたり、あるいはYoutubeの動画などを見て「自分は鼻腔共鳴ができていない」と感じたのであれば、喉仏を上げる練習をしてあげれば解決するのです。

反対に、声に太い響きが無いと悩んでいる人は、オペラ歌手の真似をして喉仏を下げる練習をしてあげると良いでしょう。

慣れてくれば地の底から響いてくるような、重くて暗い声が出せるようになります。

鋭い響き、太い響きの出し方がある程度分かってきたら、両方の響きの良いとこ取りができるバランスを探していきます。

これがいわゆる口腔共鳴です。

このように、「〇〇腔共鳴」は喉仏の位置だけで全て説明できてしまうのです。

本当の鼻腔共鳴の仕組み

漢字の意味の通りの鼻腔共鳴を実践するのは現実的ではないとお伝えしましたが、鼻に空気を通さなくても、鼻に響きを感じることはあります。

これは鼻腔が共鳴しているわけではなく、声帯の上側の空間の形が関係しています。

声帯の上には「喉頭蓋」という誤嚥防止用の蓋が付いており、その蓋が倒れると、3000㎐辺りの周波数が強く発声します。

この独特な高い周波数の響きを「シンガーズフォルマント」と呼びます。

シンガーズフォルマントが発生すると、硬口蓋(上顎の硬いところ)から鼻の裏側辺りにかけて鋭い響きを感じます。

これが本当の「鼻腔共鳴」です。

実際には鼻腔が振動しているわけではないので、見当違いな名前に騙されないようにしましょう。

鼻腔共鳴のやり方

シンガーズフォルマントを発生させるには喉頭蓋が倒れる必要があると説明しましたよね。

喉頭蓋を倒すにはどうすれば良いかと言うと、喉仏を上げれば良いのです。

みなさん唾を飲み込んでみてください。

喉仏が上がりますよね。

これは、誤嚥を防止するために喉頭蓋を倒そうとしているから喉仏が上がっているのです。

逆に言えば、喉仏を上げれば喉頭蓋が倒れるので、シンガーズフォルマントが発生し、鼻腔共鳴が完成するというわけです。

先述した、「共鳴は喉仏で全て説明できる」という部分とも繋がってきますよね。

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喉仏が動かせない人へのアドバイス

子供の頃から「声真似」をする文化がない方や、普段からあまり声を出す習慣がない方などは、「喉仏を動かす」という概念がありません。

そういった方は、声真似をしてもなかなか声を変化させられないので苦労しますが、どうか声真似を諦めないでください。

喉仏の位置というのは本来「出したい声色に合わせて自動的に動くもの」なので、喉仏を意図的に動かすのは自然の摂理に反しています。

喉仏を動かす力を養うのに、結局1番有効なのは「声真似」なのです。

時間はかかりますが、練習すれば100%できるようになるので、根気強く練習してください。

以下に練習のアドバイスを3点お伝えします。

喉仏を手で触る

声真似をする際に大事なのは

「明るくて鋭い声を出したら、喉仏が上がった」

「暗くて太い声を出したら、喉仏が下がった」

といったように、声質の変化と喉仏の位置がリンクすることです。

両者が密接に関係していることが感覚でわかれば、声質によって間接的に喉仏の位置を操作できるようになり、結果的に鼻腔共鳴口腔共鳴咽頭腔共鳴を自在に操れるようになります。

そのため、声真似は「喉仏の位置を手で確認しながら行うこと」が大切です。

ここで問題なのが、男性は喉仏が出ていますが、女性は出ていないことです。

しかしご安心ください。

女性にもちゃんと喉仏はあります。

女性は、喉の前面を手のひら全体で覆いながら唾を飲み込んでみてください。

喉の奥で、何か大きな骨の塊が大きく動くのが感じられると思います。

喉仏は数センチの軟骨の塊なので、「上端」「下端」があります。

まず手の平全体で喉仏の大きさを感じ、大体把握できたら、どこが上端でどこが下端なのかを探してください。

上端か下端のどちらか好きな方を触っておけば、喉仏の位置の変化を正確に把握することができます。

あくびを駆使する

これは喉仏が下げられない人へのアドバイスです。

喉仏を下げられない人には「あくび」がとても有効です。

少し裏技ですが、あくびをしながら声を出せば誰でも喉仏を下げた太い声が出せます。

「声に太い響きが無い」

「ボイストレーナーに咽頭腔共鳴が足りないと言われた」

こういった人は、あくびをしながら声を出す練習をすると良いでしょう。

響きを感じる

喉仏が動かせて、ある程度声質を変化させられたら、その声の響きをしっかりと感じてください。

「どこで響いているのか」

「どんな響きなのか」

「どのくらいの強さなのか」

様々な角度から分析してください。

発声に関わる筋肉はほとんどが不随意筋と言って知覚できない筋肉なので、声は音質の変化によって間接的にコントロールするしかありません。

つまり、鼻腔共鳴口腔共鳴咽頭腔共鳴がそれぞれがどのような響きなのかをキチンと把握しておかないと、歌の中で再現ができないのです。

ボイストレーニングは、第三者の目線をしっかり持って、客観的に自分を分析できる人の方が圧倒的に成長スピードは早いです。

「練習しながら、同時に分析もする」という動作に慣れていってください。

【比較】3つの共鳴はどう使い分けるべき?

それぞれの共鳴には音質的に特徴があります。

鼻腔共鳴は、明るくて、ハッキリしていて、とてもよく通る特性がある反面、行きすぎるとアホっぽいコミカルな印象になっていきます。

元気な曲やかわいい曲にはとてもよく合う反面、バラードやシリアスな曲には合いずらいです。

咽頭腔共鳴は太くて男性的な響きなので、暖かみ、安心感、安定感などは表現しやすく、ゆったりとしたバラードとは相性が良いです。

反対に、弱々しさ、儚さ、か細さなどを表現するのには不向きです。

また、高音になればなるほど咽頭腔の響きを入れるのは難しくなっていくので、太い高音はそれだけ希少性が高いと言えます。

口腔共鳴は鼻腔と咽頭腔どちらの特性も含んだ響きなので、ニュアンスのハッキリした声を使いたくない、ニュートラルな音質が求められる箇所で重宝します。

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Adoは3つの共鳴を使い分けている

今回紹介した3つの共鳴を1番よく使い分けているのがAdoです。

しかも使い分けがかなり極端なので、鼻腔共鳴口腔共鳴咽頭腔共鳴がそれぞれどんな響きなのかを知るには1番適したアーティストです。

Ado 「唱」

こちらの楽曲には3種類の共鳴がそれこそわんさか出てきますので、よく集中して聞いてみてください。

高くて甲高い声が鼻腔共鳴

太い声は咽頭腔共鳴

普通の声が口腔共鳴です。

出して練習するだけでなく、聞いて耳でも練習しましょう。

よくある質問

Q1. プロの歌手は3つの共鳴を全部使っているのですか?

多くのプロ歌手は、曲やフレーズに合わせて3つの共鳴を組み合わせています。特にAdoのように使い分けが極端な歌手は、耳で聴くだけでも違いがわかるほど明確です。練習段階ではまず1種類ずつ習得し、その後バランスよく混ぜるのが効果的です。

Q2. 鼻腔共鳴・口腔共鳴・咽頭腔共鳴はどれが一番良いのですか?

どれか1つが常に正解というわけではありません。曲や表現したいニュアンスによって使い分けることが重要です。明るく通る声が欲しい時は鼻腔共鳴、太く落ち着いた響きが欲しい時は咽頭腔共鳴、どちらの特性も含めたい場合は口腔共鳴が向いています。

Q3. 鼻腔共鳴って鼻に息を通すことですか?

違います。鼻に息を通すと鼻声になります。本当の鼻腔共鳴は、喉仏を上げて喉頭蓋を倒すことで生まれる「シンガーズフォルマント」による高い周波数の響きのことです。

Q4. 喉仏を動かすのが難しいです。どうしたらいいですか?

まずは声真似をして声質と喉仏の位置の関係を知ることから始めましょう。喉仏に手を当てて位置を確認する、あくびをしながら声を出す、響きを意識して分析するなどの練習を続ければ、必ず喉仏をコントロールできるようになります

まとめ

鼻腔共鳴・口腔共鳴・咽頭腔共鳴は、それぞれ音質的な特徴と得意な場面があります。重要なのは、漢字の意味にとらわれず響きの種類として捉えることです。

響きのコントロールは「喉仏の位置」で説明でき、声真似やあくびを活用した練習で自在に操れるようになります。目的や曲調に応じて3つの共鳴をバランス良く使い分けることが、表現力の高い歌声への近道です。

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