みなさんこんにちは!
WACCA MUSIC SCHOOLです!
歌う時に「裏声が出ない」「裏声が弱い」と悩んだことはありませんか?
本記事では、初心者でも裏声をキレイに出せるようになるための練習法やコツをわかりやすく解説します。
裏声の基本から、美しく響かせるテクニックまで、ぜひ参考にしてください。
裏声とは?地声との違いを知ろう
裏声を上手く出すためには、まずは裏声の仕組みと地声との違いを正しく理解することが大切です。
ここでは、裏声の特徴や音色、そして地声との使い分けについて説明します。
裏声の定義
まず裏声の定義を説明しておきます。
それは「声帯の質量が小さいこと」です。
つまり、声帯が薄っぺらいということですね。
それ以外ありません。
つまり声帯が閉まっていようと、音量が大きかろうと、キンキンしていようと、声帯の質量が小さければ、それは「裏声」なのです。
裏声の音色の秘密
裏声の音質は、一般的に「軽くてふわふわしていて、頼り無い声」というイメージだと思います。
質量の小さい声帯が擦れ合うのだから、軽い音が鳴るのは当たり前なのですが、いわゆる「裏声らしい音質」になるのは他にも理由があります。
先述の通り、裏声は声帯の質量を小さくしてあげないと出せません。
この「声帯の質量を小さくする」という動作は「弱い声を出す」という意識に連動して、自動的に行われています。
基本的に声の強さは「声帯に当たる息の強さ」によって決まるので、強い声を出そうとすれば強い息が声帯にぶつかることになります。
そうすると声帯は、その強い空気圧に耐えるために「分厚くならなきゃ!」といった感じで反射的に分厚くなります。
それに加えて声帯の上にある「仮声帯」や「喉頭蓋」といった「息を堰き止めることができる器官」も反射的に閉じていきます。
(詳しくは地声を高くする方法をチェック!)
だから一般的な強い声は、重たく迫力があり、息感が無い音質になるのです。
(余談ですが「高音が出ない地声」が生成されるプロセスも、これと全く同じです。)
それに対して弱い声を出そうとしている時は、声帯が強い空気に吹き飛ばされる心配がないので、声帯を無理に分厚くしようとしなくなります。
それに伴って仮声帯や喉頭蓋も、無理に閉じようとはしなくなります。
そうして出る声は、息っぽく、弱々しく、軽くて、フワフワした、いかにも「裏声」という音質になるのです。
つまり、裏声を裏声らしい音質にしているのは、「弱い声を出そう」という無意識の信号なのです。
裏声を練習する意義
先述した通り「弱い声を出そう」という意識と「裏声の音質」は深く関係していますが、歌が苦手だったり、発声において不自由な思いをしている人ほど、両者の関係は密接です。
つまり、歌が苦手な人ほど、裏声を強く出すことができないですし、地声を弱く出すことができません。
そうするとどうなるかというと、単純に地声で高い声が出せなくなります。
音程は声帯の厚みと息の強さという2つの要素で調整するのですが、地声=強い声になってしまうということは、声帯が分厚い状態でしか地声が出せないということなので、必然的に地声で高い声が出せなくなるのです。
これを回避するためには、裏声を強く、地声を優しく出す練習をして、「強さ」と「声区(地声、裏声のこと)」の結びつきを解除する以外に道はありません。
だから裏声を練習するのです。
地声と裏声の違いを正しく理解する
裏声は声帯の質量が小さいのに対して、地声は声帯の質量が大きいです。
つまり声帯が分厚いのです。
声帯の分厚さがある一定レベルを超えていれば、それは地声になります。
よくある間違いとして、音質がスカスカしていたり、弱々しい声だったり、高い音だったりすると裏声だと思う方がいますが、それは間違いです。
そういった理由から地声ではないと言い切ることはできないので、注意してください。
先述の通り、地声と強い声が深く結び付いている人ほど、スカスカした音質の地声や、弱々しい地声、高音の地声は出せなくなります。
日頃から様々な出し方の地声を出し慣れておくようにしましょう。

裏声を出すために必要な呼吸法と姿勢
裏声を支えるのは、正しい呼吸法と姿勢です。
ここでは、裏声を楽に出すための呼吸のポイントや、体の使い方を紹介します。
裏声の決め手は腹式呼吸
先述の通り、弱く声を出そうとすることと、裏声を出すことには密接な関わりがあります。
「弱く声を出そうとする」ということは、言い換えれば「腹筋を思い切り発動させて声を出さない」ということです。
腹筋は別名「呼気筋」と呼ばれていて、強く息を吐くためには腹筋の発動が絶対条件です。
裏を返せば、腹筋を発動させた瞬間に喉は「強い声を出すモード」になってしまうので、喉にあるあらゆる器官が閉じようとしてしまうのです。
そうなると裏声はやたらとキンキンした音質になったり、ノイズが入ったり、喉が締まったり、詰まったような感覚になったりしてしまいます。
つまり、正しい裏声を出すためには、まず腹筋に頼らずに声を出す技術が必要になるのです。
「そんなことが果たしてできるのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、横隔膜を上手に扱えれば可能です。
腹式呼吸ができている人は、横隔膜がきちんと下げられています。
横隔膜が下がると、自然と元に戻ろうとする力が働くので、腹筋を使わなくても息が吐けるのです。
この力を利用して、腹筋を使わずに裏声を出す訓練をしましょう。
例えば息を限界まで吸って、ゆっくり吐いていく時に、途中まではどこにも力を入れなくても吐けますが、途中から腹筋に力を入れないと吐けなくなりますよね?
この「腹筋に力を入れ始める前」が、横隔膜で息を吐けている時間です。
その時間の中で裏声を出す訓練をするのです。
最初は息が全く持たなかったり、ボリュームがほとんど出なかったり、腹筋に力が入ってしまったりするかもしれませんが、これは「横隔膜をゆっくり戻していく技術」と「声帯の振動」が噛み合えば解決します。
横隔膜は弛緩すると上がっていくので、いきなり弛緩するのではなく、徐々に弛緩させられれば、理論上息は保ちます。
さらに、横隔膜によって適切な大きさに整えられた呼気圧に声帯がしっかり反応できれば、普段より小さい呼気圧でも普段と変わらない音量が出せるというわけです。
裏声を正しく出すためにまずやることは「腹式呼吸」なのです。
腹式呼吸で最も大事な姿勢
正しく裏声を出すためには、横隔膜の力を利用すると良いということでしたが、これはそもそも横隔膜が下がっている、つまり腹式呼吸ができている前提での話です。
横隔膜を下げられるかどうかは、骨盤の角度で決まってきてしまいます。
反り腰傾向のある方は横隔膜が下がりづらく、猫背傾向のある方は横隔膜が上がりづらくなります。
そのため、まずは姿勢をどうにかしないと腹式呼吸ができず、腹式呼吸ができなければ裏声も綺麗に出せないのです。
↓このような姿勢矯正のエクササイズを行い、姿勢をまずは改善しましょう。

裏声の出し方ステップガイド
姿勢と腹式呼吸が改善されてきたら、いよいよ裏声を出していきます。
裏声を出す練習は、段階的に行うのがポイントです。
ここからは、初心者でも取り組みやすいステップ毎の練習方法を解説します。
ステップ1:楽な音域の地声をハミングで出す
まずは男性F3、女性 A3辺りの、地声で楽に出せる音程で、ハミングをしましょう。
この時のハミングは、腹式呼吸で、腹筋に力を入れておらず、横隔膜が戻ってくる力だけで出せているハミングにしてください。
そうすると声帯や強く閉じようとする動作や、息を堰き止めようとする動作が働きづらくなるので、鼻息がしっかりと出たままハミングができるはずです。
声を出さずに鼻で深呼吸した時と比べて、鼻息が出づらくなっている感覚があれば、おそらく息を堰き止める動作が既に起こり始めています。
全く抵抗感無く鼻息が出ながらハミングができるように練習してください。
完全に息が流れたハミングができると、声が喉から出ているが一切無くなり、「鼻から声が出ている」かのような感覚になります。
そこまでいければステップ1はクリアです。
ステップ2:音程を上げていく
ステップ1で出した喉に一切引っかかりの無いハミングのまま、音程を上げて行ってください。
この時に、「地声のハミングを出そう」という意識は完全に捨て去ってください。
とにかく鼻から声が出ているような軽い体感で声を出すことだけに集中して、地声か裏声かは考えないでください。
「地声なのか裏声なのかわからない」くらいの体感がベストです。
ステップ3:D4くらいで裏声になる
音程を上げていき、D4辺りで「あ、これは間違いなく裏声だ」と思える声になっていればOKです。
鼻から声が出ているような感覚が無くなってしまっていたり、鼻息が出る量が減ってしまっていたらやり直しです。
上手くいくと、喉のつらさが一切無く、声が浮いているかのような体感の裏声が出せているはずです。
ステップ4:発音を「ホ」にし、ロングトーンしていく
ステップ3までができたら、その体感のまま発音を「ホ」にして、ロングトーンしていってください。
やるとすぐにわかりますが、ハミングの時と全く同じ出し方だと、絶対にロングトーンはできません。
ハミングの時と同じくらいの楽さをキープしながら、息を節約していかないといけないのです。
これが「横隔膜をゆっくり戻す練習」になっていきます。
息の量の調整を横隔膜ではなく喉で行うと、一気に浮いているような軽い体感が失われるので、とにかく集中して、どんな些細な変化も見逃さないように練習しましょう。
ステップ5:さらに音程を上げる
D4のロングトーンまでができたら、さらに行けるところまで音程を上げてください。
「声が浮いている体感」が残っているギリギリまで音程を上げるようにしてください。
自分の出せる限界の音程を記録しておくと、成長が実感できて良いと思います。
裏声の音域はB5まであると言われているので、軽い体感を維持したままB5まで上がれれば素晴らしいですね。

裏声をもっと美しくするための練習法
裏声のトレーニングは大きく分けて
・ロングトーン
・音程の上下
・響きの強化
この3つがあります。
ここでは3つ目の響きの強化について解説していきます。
裏声を前方向に響かせるトレーニング
裏声を強く響かせる方法は2種類しかありません。
すなわち
「ハッキリさせるか」
「ふくよかにするか」
です。
先程の出し方の裏声を、発音は「ホ」のまま、斜め前上方向に少しプッシュしてみてください。
すると、裏声特有の柔らかさが少し取れて、ハッキリした印象の声になったのでは無いでしょうか。
この方法で、楽な体感はキープしたままなるべく響きを強めてみてください。
この場合、腹筋には少しなら力が入っても構いません。
感の良い方はお気付きかもしれませんが、これは裏声に少し締める力を加えて響きを強化する方法です。
裏声の動作の中に、声帯を閉鎖する動きに深く関わっている「甲状舌骨筋」や、声帯を閉じる「披裂筋群」などを入れていくトレーニングになりますので、前半で説明した「強さと声区の結びつき」を解除するのにとても有効な練習です。
積極的に練習しましょう。
裏声を後ろ方向に響かせるトレーニング
今度は腹筋には力が入ってはいけません。
前章のステップ1〜5で解説した出し方のまま、ボリュームだけを大きくするような練習だと思ってください。
前方向に力を入れてしまうと出し方が少し変わってしまいますので、出し方を維持したままボリュームを上げるには「後ろ方向に力を入れていく」しか方法が無いのです。
この練習が上手くできると、軽くて浮いているような体感はキープしたまま、オペラ歌手のようなふくよかな響きの声になっていきます。
この練習によって、声帯を伸ばす筋肉の代表である「輪状甲状筋」だけでなく、声帯伸展をサポートする「口蓋喉頭筋」や「輪状咽頭筋」なども鍛えられるため、声帯伸展力が爆発的にアップします。
高音を出すには声帯が伸ばせないと話にならないので、高音で悩んでいる方は特に重点的にやるべき練習でしょう。

裏声でよくある悩みと解決法
「裏声が弱い」「地声が混ざってしまう」といった悩みを抱える方も多いでしょう。
ここでは、よくある裏声の悩みとその解決策を紹介します。
裏声が弱々しい…どうしたらいい?
「超楽だけど、弱い」と悩んでいるのであれば、先述した2種類の響きのトレーニングをしていきましょう。
ただ、「出し方は完璧で強さだけが問題」というのは経験上ほとんどありえません。
裏声が弱々しい人は大体出し方も間違っています。
まずは先述したステップ1〜5を行い、出し方を確認してから強くしていくトレーニングをしましょう。
裏声に地声が混ざってしまう場合の対策
まずは腹筋の力を抜き、自然と息が出ようとする力だけで裏声を鳴らすことに集中すべきです。
地声が混ざってしまう人の裏声は鳴っている位置が少し低い傾向があるので、上手くできると「え、こんなに高い位置で鳴るの!?」とびっくりするはずです。
このパターンの方は声を強く出そうとしてしまう癖がある場合も多いので、とにかく弱く、優しく、慎重に出して、喉に一切引っかかりの無い体感を追求していくと良いでしょう。
裏声をマスターして歌に活かそう
裏声を自在にコントロールできるようになると、歌の表現力が格段に上がります。
最後に、裏声を活かす応用法やおすすめの曲を紹介します。
地声と裏声を自在に切り替えるミックスボイス
「ミックスボイス」というテクニックを聞いたことがある方は多いと思います。
一般的には、地声と裏声をスムーズに行き来できる声がミックスボイスだとされていますが、先述したステップ1〜5が上手くできれば、自然とミックスボイスになります。
ミックスボイスは声帯の厚みの調整だけで音程を上下させるテクニックです。
息を堰き止めて腹筋を踏ん張り、パワーで音程を上げてしまうとミックスボイスではなくなってしまいます。
ステップ1〜5ができていると息が流れて、腹筋を踏ん張ることができなくなるので、声帯の厚みで音程を調整するしか無くなります。
声帯の厚みで音程を調整するという動作に体が完全に順応すれば、もはや音程を上げるという動作にパワーは必要無くなります。
これがミックスボイスです。
裏声を活かせるおすすめの曲・ジャンル
裏声は特にバラードでよく使われる傾向にあります。
最近はMrs.GREEN APPLEの登場で裏声が目立つ楽曲も増えてきました。
以下に裏声を活かせる楽曲を挙げていきます。
Mrs.GREEN APPLE「ナハトムジーク」
特にAメロの部分は横隔膜を上手に扱えていないと決してできない技術が結集されています。
横隔膜の扱いが苦手な人が、大森さんの質感を出そうとすると、たちまち息切れしてしまうでしょう。
宇多田ヒカル「初恋」
とてもキャッチーな冒頭の部分はほとんどが裏声で歌われています。
この質感を安定して出すのは高い身体コントロール技術が必要です。
大森元貴「French」
超高難易度曲です。
高音ばかりが注目されるこの曲ですが、「忘れては無い」から「全ては無い?」までが一息で歌われているところが最もすごいところです。
この儚い声質を保ったまま、ここまで長いフレーズを(しかも最後に A5の超高音)歌えるのは、横隔膜と声帯のコントロールがとてつもない領域であると言わざるを得ないでしょう。
まとめ
裏声は、正しい知識と練習を積み重ねれば誰でも習得できます。
地声との違いを理解し、姿勢や呼吸を整え、段階的に練習することが大切です。
裏声が安定すると、歌の表現の幅が大きく広がり、聴き手に感動を与える歌声が手に入ります。
ぜひ今日から練習を始めて、理想の裏声を手に入れましょう!
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