みなさんこんにちは!
WACCA MUSIC SCHOOLの石川です!
本日は「喉をひらく」について書いていきます!
「喉をひらく」といえば、「お腹から声を出す」「喉を締める」などと並ぶ、ボイトレ業界の意味不明ワードの代表ですよね!笑
今回はこの難解な概念を一緒に解き明かしていきましょう!
おしらさんありがとう
先日ボイトレ業界で1番の著名人と言っても過言ではない「しらスタ」さんが、「喉をひらく」に関して動画を出していらっしゃいました!
動画はこちら↓
僕はしらスタのおしらさんが大好きなので、この動画も本当に楽しく見させていただきました。
個人的な話になってしまいますが、僕はこの「喉をひらく」という言葉のわかりにくさが昔からとても嫌いだったので、おしらさんがこのテーマを扱ってくれたことが本当に嬉しかったです。
「喉をひらく」とは?
ここからは僕なりの「喉をひらく」に関して書いていこうと思います。
しらスタさんと意見が食い違う部分があるかもしれないので、その時は腑に落ちた方の意見を取り入れてくださいね。
今回「喉をひらく」の「ひらく」をあえてひらがなで書かせていただきました。
これはしらスタさんの動画のサムネイルに寄せた訳ではなく、理由があってのことです。
「喉をひらく」の「ひらく」は、漢字で書くと「開く」になりますよね。
「開く」という言葉は、扉や門などによく使われる言葉なので、「開く」と言われるとどうしても「開閉可能な場所を開ける」だと捉えてしまいがちです。
喉の中にある開閉可能な場所といえば、真っ先に思い浮かぶのはそう、「声帯」ですよね。
だからしらスタさんも動画の中で、「喉をひらく」と「声帯を開く」は別物だと明言している訳です。
「喉をひらく」が意味不明な原因は、この「ひらく」という言葉のチョイスにあると思います。
それでは、どういう表現が適切なのでしょうか。
先に僕の見解をお伝えすると、僕は喉を「広げて」が正しいと思います。
その理由を以下にお伝えしていきます。
どんな時に「喉をひらけ」と言われるのか考えてみよう
なぜ「ひらけ」ではなく「広げて」が適切なのか。
その理由を考えるために、まずはどんな時に「喉をひらけ」と言われるのか考えてみましょう。
「喉をひらけ」と言われるのは、ほとんどは苦しいそうに歌っている時ですよね。
気持ち良さそうに、快適に歌っている時には「喉をひらけ」とはあまり言われないと思います。
それでは、苦しそうに歌っている時の声の音質は、どんなイメージを持っていますか?
僕が思いつくのは
- ・細い
- ・狭い
- ・キンキンしている
- ・詰まったような印象
- ・雑音が入っている
こんなところでしょうか。
このコラムを読んでいるみなさんも、ほとんどの方が僕と同じようなイメージを持っていると思います。
つまり多くの人は、上記のような特徴を持った声で歌っている人を見ると「喉をひらいて!」と言いたくなるのです。
(僕は一度も言ったことはないですし、これからも絶対に言いません笑)
苦しそうに歌っている人は「喉の空間が狭い」
上記の、苦しそうに聞こえる音質に共通した特徴は「喉の空間が狭い」ということです。
喉の空間が狭いと、音は細く・狭く・キンキンした印象になります。
楽器をイメージしてもらえばわかりやすいですね。
大きい楽器は太く広く響き、耳障りなうるささはあまり無いイメージですが、小さい楽器は細く狭い音色で、小さくなればなるほど甲高くキンキンとした音色が強調されていきます。
声も全く同じです。
「詰まったような印象」という部分も、喉の空間の狭さで説明がつきます。
喉の空間が狭いということは、空気の出が悪いということです。
肺から出された空気は声帯の間を通って口から出ていきますが、声帯の上側の空間が狭いと空気が出づらくなるので、音質も詰まったような、息が堰き止まっているような閉塞感のある声になります。
最後の「雑音が入っている」に関しても同様です。
雑音が入るということは「喉の中で何かが接触している」ということです。
接触するということは「物体と物体が近寄っている」ということなので、喉の空間が狭くならないと起こり得ないのです。
つまり、聞いていて苦しそうに聞こえる声のほとんどは、喉の空間が狭いことによって生み出されているのです。
これがいわゆる「喉が締まっている」状態ですね。
喉の空間が狭くなってしまう理由
なぜ苦しいとわかっているのに、体は喉の空間を狭くしようとしてしまうのでしょうか。
これは、喉の空間を狭めて息を流れづらくすることで、体を注射器と同じ状態にしたいからです。
注射器の中に水を入れて思い切り押し込んだら、水はかなり遠くに飛びますよね。
しかし、針が無ければどんなに強く押し込んでも水の飛距離はたかが知れています。
声もこれと全く同じ原理で、出口を狭くしてあげないと力が入らず、強い声にならないのです。
大きい声を出したい時や、高い声を出したい時に喉の空間が狭くなって締まってしまうのは、こういったカラクリがあるからです。
(高音が強い声でしか出せなくなる理由は こちら を参照してください)
本来であれば、苦しさを全く感じずに喉の空間を狭めることは可能です。
快適に喉の空間を狭められれば、息を吸うことで高まった体の内部の圧力を、最も効率の良い形で出力できるので、強いボリュームの声やロングトーンなどが簡単に出せるようになります。
(これがいわゆる「お腹から声を出す」状態です)
しかし、歌が苦手だったり、喉の筋力が未熟だったりすると、苦しさを伴う方法でしか喉の空間を狭められないのです。
「苦しさの伴う空間の狭め方」から、「苦しさを伴わない空間の狭め方」へ移行するのは非常に困難なので、まずは空間を狭めることを辞めて、苦しさから解放されてから、ちょうど良い狭め方を模索するようにしましょう。
「喉をひらけ」の本当の意味は「喉の空間を広くして」
ここまで読んでくださったあなたなら、喉の空間が狭くて苦しそうに歌っている人に向かって言う「喉をひらいて!」の意味がわかりますよね。
答えは「喉の空間を広くして」です。
喉の空間が広くできれば、先述した苦しそうに聞こえる要因は全て取り除けます。
しかし、喉の空間を広くしてと言われても、どのように広くすればわからないですよね。
ここからは喉の空間を広くする方法を説明していきます。
喉の空間を広くする方法
喉の空間を狭くしてしまう理由は「息の流れを堰き止めて注射器と同じ状態にしたいから」でしたよね。
喉の空間を広くしたいなら、その逆をやれば良いのです。
つまり、息を流せば良いのです。
喉仏を下げたり、口を開けたり、声帯の閉鎖具合を軽くしようとしたりなどなど、「喉をひらけ」に対するリアクションはしらスタさんの動画にある通りたくさんありますが、どれも根本解決にはなりません。
息を堰き止めるのをやめて、息が流れる状態にしてあげないと、苦しさは無くならないのです。
息を流す練習方法
息が流れている状態を作るにはハミングを利用するのが効果的です。
まずは口を閉じて鼻で深く深呼吸をしましょう。
鼻水が出てしまいそうになる吐き方で鼻から息を出して、大きめの鼻息を鳴らしてください。
この時に喉の辺りで「ヒューヒュー」と呼吸音が聞こえる人は既に喉の空間を狭くしてしまっているので、鼻息だけが聞こえるように練習してください。
大きめの鼻息だけが鳴る状態が作れたら、その鼻息の勢いが一切損なわれないまま、ハミングで声を出してみてください。
地声でも裏声でもどちらでも構いません。
深呼吸の時は、しっかり鼻息が出ていたけど、声を出した途端鼻息が少なくなってしまう人は、息が流せていません。
何度も練習して、地声でも裏声でも、息を堰き止めずに出す練習をしましょう。
しっかりできれば、喉の負担が全く無く、まさに「喉がひらいている」感覚で声が出せていることに気がつくはずです。
よくある質問
「喉をひらく」ためには息を流す練習をすることが大切です。
ここからは、息を流す練習をする際によくある質問に答えていきます。
Q. 息を流してしまったら、裏声になってしまいませんか?
A. その通りです。
息を堰き止めずに流せば、肺からの空気圧に声帯の力だけで耐えなければならなくなるので、大きい声や高い声は裏声になってしまいます。
でもそれで一旦良いのです。
今までは息の堰き止めに頼って、声帯の筋力以上の音域を出そうとしていたに過ぎません。
練習していけば徐々に声帯の筋力が上がっていき、息を堰き止めずに地声を出せる範囲が増えていきます。
Q. 歌の中でも、息が流れているかどうかを判断する方法はありますか?
A. あります。
喉の空間を狭くして息を堰き止めるのが癖になってしまっている人は、息が流れている声を出すと直感的に「これ息が保たない声だ」と感じます。
他にも、以下のようなポイントで判断できます。
- ・軟口蓋辺りに息感を感じる
- ・お腹が内側に減り込んでくるような感覚がある
- ・声質に息感が出る
これらのポイントを踏まえて総合的に判断しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
予期せず「喉をひらく」だけでなく、「お腹から声を出す」・「喉を締める」まで解説してしまいましたね笑
ボイトレは見に見えない部分を扱うので、どうしても感覚的なアドバイスが多くなり、難解なワードが生まれがちなジャンルです。
このコラムが読んでも、喉のひらき方がわからない場合はWACCA MUSIC SCHOOLの無料体験レッスンに、お気軽にお越しください。
熟練のボイストレーナーが、わかりやすく教えます。
それでは!