こんにちは、WACCA MUSIC SCHOOLです。
今回は「声が弱々しくて通らない」「頑張って出しているのに息っぽく聞こえる」と悩んでいる方に向けて、声をしっかり鳴らすためのポイントを解説します。
声が弱く感じるとき、多くの方は「もっと息を出さなきゃ」と考えてしまいますが、実はその逆です。
息を強く出そうとすると、喉が反射的に締まり、声の響きが逃げてしまいます。
大切なのは、息の量を増やすことではなく、息の流れをコントロールして声の圧を保つことです。
この記事では、喉を無理に締めずに声を太く、安定して響かせるための練習方法を分かりやすくご紹介します。
声が弱々しくなる原因
声が思うように出ない、話すとすぐ疲れる、歌うとスカスカした声になる——そんな「声の弱さ」を感じる人は少なくありません。
声が弱々しくなる原因は、喉そのものの問題だけではなく、呼吸や姿勢、筋肉の使い方など、複数の要素が関係しています。
ここではまず、その中でも特に多く見られる要因のひとつである「息の量」に注目して解説していきましょう。
横隔膜が使えていない
声の強さや安定感を支えているのは、喉の力ではなく「横隔膜の働き」です。
横隔膜は肺のすぐ下に位置する大きなドーム状の筋肉で、息を吸うときに下がり、吐くときにゆっくりと上がる構造をしています。
この上下運動によって胸腔の容積が変化し、空気が出入りします。吸気では空気を取り込み、吐くときには横隔膜が元の位置に戻ろうとする「弾性の力」によって、肺が圧縮されて空気が押し出されます。
つまり、声を出すための空気圧(呼気圧)は、横隔膜が下がったあとに自然に“戻ろうとする力”によって生まれているのです。
この呼気圧が安定していると、声帯には均一な空気の流れが送られ、振動が滑らかに保たれます。結果として、無理のない強さと響きをもった声が出せるようになります。
しかし、横隔膜が十分に使えていないと、肺の下部まで空気が入らず、息を押し出す力が弱まります。その結果、声帯にかかる圧が足りず、声が「細い」「スカスカしている」「頼りない」と感じられるようになります。
また、息が足りないことを身体が無意識に補おうとして、喉の上部(舌根や仮声帯、咽頭の周囲筋)を締めて圧力を作り出そうとする傾向が生まれます。
この状態になると喉の空間が物理的に狭まり、共鳴のスペースが潰れてしまうため、声が響かず、こもったような音になります。
さらに喉に負担が集中することで、声帯や周囲の筋肉が疲れやすくなり、長時間話したり歌ったりすることが難しくなります。
本来、理想的な発声とは「下で支えて、上で響かせる」状態です。横隔膜や腹筋群で息を下からコントロールすることで、喉をリラックスさせ、空気の流れを自然に声帯へ導くことができます。
このとき、胸や喉の力ではなく、身体の下部で圧を支える感覚が重要になります。横隔膜を中心とした呼吸筋の働きが安定すれば、声帯の振動も安定し、喉の上部が自由に動けるようになります。
結果として、共鳴腔が開放され、響きのある強い声が生まれるのです。
逆にいえば、横隔膜が使えていない状態では、息を押し出すための「支え」が存在しないため、喉で無理に圧力を作るしかなくなり、声の響く空間を自ら潰してしまうことになります。
したがって、弱々しい声を改善するためには、横隔膜をしっかりと動かす呼吸法を身につけ、下から空気を安定して押し出す感覚を養うことが最も重要なのです。
声帯がしっかり閉じていない
声が弱々しくなる原因のひとつに、「声帯がしっかり閉じていない」という状態があります。
声帯は喉の中にある左右一対の筋肉のヒダで、発声の際には左右がぴったりと閉じ、その間を空気が通ることで振動が起こり、声のもととなる音が生まれます。
ところが、声帯の閉じが甘く、わずかに隙間が空いたまま声を出すと、空気がその隙間から漏れ続け、息が混ざったようなスカスカした声になります。
この状態では、声帯の振動が安定せず、音の立ち上がりも弱くなるため、声に芯がなく、頼りない印象になります。
また、空気が効率的に音に変換されないため、同じ量の息を使っても音量が出にくく、声が遠くに届かなくなります。
息漏れが多くなることで、喋っているうちに息がすぐ切れたり、長いフレーズを言い切れなかったりすることもあります。
録音して聞くと、声が「息っぽい」「かすれている」「輪郭がぼやけている」と感じる場合、この声帯の閉鎖不足が起きている可能性があります。
原因としては、声帯を閉じるための筋力が弱い、息の勢いが強すぎて声帯が吹き飛ばされている、または喉の周囲が緊張していて自由に動けない、などが考えられます。
こうした状態が続くと、声帯は十分に振動できず、結果として「息ばかり多くて音が少ない」非効率な発声になります。
そのため、声全体のエネルギーが拡散し、声量も響きも失われてしまうのです。
どうしても強い声が出せない人へ
息の堰き止めの不足
声が弱々しくなる原因のひとつに、体の中で空気圧をしっかり保持できていないことがあります。
声は、声帯そのものの力ではなく、肺や横隔膜などの呼吸筋によって作られる空気の圧力によって支えられています。
この下からの圧力(声門下圧)が安定していれば、声帯は規則的に振動し、太く芯のある声になります。
しかし、この下圧が弱いと、声帯の振動が不安定になり、息が多く混じったような、軽く頼りない声になってしまいます。
下圧を十分に強めるためには、空気を体内にためる仕組みが必要です。
その役割を果たしているのが「息の堰き止め」です。
堰き止めとは、空気の流れに対して声帯の上側で抵抗を作り、体の中に圧を保持する働きのことを指します。
これは声帯を閉じる動きとは別で、仮声帯や咽頭の周囲筋などが関与して行われます。
声帯はあくまで空気の流れを音に変える振動体であり、圧をためるための構造ではありません。
空気圧は声帯より下で生まれます。
横隔膜や肋間筋、腹筋群などの働きによって空気が押し上げられ、声帯に送られます。
一方、息の堰き止めは声帯よりも上の部分で行われ、仮声帯や咽頭筋群が外に出ようとする息をせき止めます。
このとき、声帯は上下の圧力に挟まれた状態になり、下からは呼気圧が、上からは堰き止めによる抵抗がかかります。
この「上下の圧のバランス」が取れているとき、声帯は最も安定して効率的に振動します。
堰き止めが弱いと、上で息が止まらず空気が外へ抜けてしまうため、体内の圧が保持できません。
すると、下圧を強めようとしても押し返す対象がなくなり、結果としてお腹で踏ん張る感覚が失われるのです。
この状態では声帯に十分な圧がかからず、声が軽く、伸びのない弱々しい音になります。
逆に、声帯に多少の隙間があったとしても、仮声帯などが息をしっかり堰き止めていれば圧は保たれ、下からの支えが成立します。
つまり、声が弱々しくなる原因の一部は、息がどこでも止まらずに流れ続けてしまうことにあります。
下では圧を作り、上では適度に堰き止める——この関係性が崩れると、声帯は支えを失い、発声全体が不安定になるのです。
声が力強くならない背景には、こうした「体内の圧力バランスの崩れ」が深く関係しています。
弱々しい声を強くする方法
ここまでで、声が弱々しくなる原因には、横隔膜の働き不足、声帯の閉鎖の甘さ、そして息の堰き止めの欠如といった複数の要素が関係していることを説明しました。
つまり、息を送り出す力(下圧)、その息を音に変える力(声帯)、そして息の流れを支える力(堰き止め)の3つのバランスが崩れると、声は一気に弱々しくなってしまいます。
反対に、この3つが正しく働けば、声は自然に芯を持ち、力みのないままでも響きと安定感を備えるようになります。
声を強くするためには、「息をどう使い」「どこで支え」「どのように声に変換するか」を整えることが重要です。
これから、それぞれの要素――横隔膜、声帯、堰き止め――をどのように整えていけばよいのかを順に解説していきます。
横隔膜を使えるようにする方法
横隔膜を使う目的は、喉を締めずに声門下圧(声帯の下にかかる空気圧)を安定させることにあります。
横隔膜は吸気のときに下がり、肺の下部まで空気を引き込みます。
その後、特別な力を加えなくても筋肉の弾性によって、ゆっくりと元の位置へ戻ろうとします。
つまり、息を「吐こう」としなくても、横隔膜が自然に戻る力だけで空気は上がっていきます。
この「自動的に戻る力」を邪魔せずに保つことが、喉を閉めずに声門下圧を作るための基本になります。
最初は仰向けで練習するのが効果的です。
お腹の上に手を置き、静かに息を吸い込みます。
胸や肩が動かず、お腹がふくらむように感じられれば、横隔膜が下がっています。
吸い終わったら、そのまま息を止めずに、できるだけゆっくり吐いていきます。
お腹を引っ込めたり、押したりせず、吸ったときの張りを保ちながら息を流すようにするのがポイントです。
ここでやってはいけないのが、「吐こう」と意識して力を加えることです。
息を吐こうとすると腹筋が反応し、横隔膜が急激に押し上げられます。
それに連動して喉の筋肉も反射的に働き、結果として喉が狭くなりやすくなります。
喉を開いたまま声門下圧を保つには、横隔膜の戻る力をゆっくり使うことが不可欠です。
横隔膜が急激に戻らないように、お腹の表面ではなく、内側の圧を軽く保ちながら息を出します。
お腹に力を「入れる」のではなく、吸ったときに生まれた張りを維持する意識です。
この状態では、腹筋は積極的に働いていませんが、内圧が均等に保たれているため、強すぎず弱すぎない声門下圧が持続的に声帯にかかるようになります。
この原理を体で覚えるために、「スーーー」と細く長く息を出す練習を行います。
息を押し出すのではなく、吸ったときの状態を保ったまま、自然に空気が流れ出ていくようにします。
喉の奥が広く、空気が静かに流れていれば成功です。
慣れてきたら、「スッ、スッ」と短く区切って息を出してみてください。
横隔膜がリズミカルに反応し、空気の調整がより細かく行えるようになります。
最後に声を加えてみます。
「んー」や「うー」などの母音で、喉を締めずにゆっくり息を流してみましょう。
喉が動かず、声が安定して続くようであれば、横隔膜の戻る力で声門下圧が保たれている状態です。
横隔膜を下げて空気をため、急がずに戻る力だけで声を鳴らすことができれば、喉に負担をかけずに安定した太い声を出せるようになります。
どうしても強い声が出せない人へ
声帯閉鎖ができるようになる方法
声帯閉鎖とは、声帯の左右のヒダがしっかりと合わさり、息の漏れを最小限にして振動できる状態を指します。
声を強くするうえでこの閉鎖は欠かせませんが、力で無理に閉じようとすると、逆に喉全体が硬直してしまいます。
正しい声帯閉鎖とは、必要な筋肉が自然に働いて声帯同士が寄り、余分な息が漏れない状態を作ることです。
まずは「息を使いすぎない」感覚を身につけることから始めます。
声帯閉鎖が弱い人は、声を出す前に息を勢いよく出してしまう傾向があります。
これでは声帯が開いたまま息が流れ、息漏れしたような声になります。
息を出してから声を出すのではなく、「声を出すと同時に息が動き始める」感覚を意識することが重要です。
閉鎖の感覚をつかむためには、軽い「ハミング」から始めるのが効果的です。
口を閉じて「んー」と小さく鳴らし、鼻の奥や唇のあたりが振動しているのを感じてください。
このとき、息が抜けず、内側で音が鳴っていれば声帯がしっかり合わさっています。
もし空気が抜けるような感覚がある場合は、息が強すぎるか、声帯の接触が弱い状態です。
慣れてきたら、「んー」から「ねー」「のー」「にー」など母音を伴う音に移行します。
鼻にかかりすぎず、響きが前に出てくるようになったら、声帯の閉鎖がより効率的に働いています。
もう一つの練習法は、軽く咳払いする動作です。
「ッ」と短く咳をするようにして、その瞬間に声帯が閉じて音が止まる感覚を確認します。
これは声帯の瞬間的な閉鎖を体感できる簡単な方法です。
咳を繰り返すのではなく、「閉じてから音が出る」一瞬の反応を感じ取ることが目的です。
声帯閉鎖ができるようになると、息が無駄に流れず、声がまとまりやすくなります。
また、喉に余分な力を入れずとも、声に芯が通り、音量を上げても疲れにくくなります。
声を強くするための閉鎖は「力で押さえる」ものではなく、「息が少ない中で自然に寄る状態」を作ることが大切です。
この感覚が定着すれば、少ない息でもはっきりと響く、芯のある声が出せるようになります。
息を堰き止められるようにする方法
息を堰き止める力を高めるためには、「仮声帯」を意識的に動かせるようにする必要があります。
仮声帯は、声帯のすぐ上にある一対のヒダで、空気の流れにブレーキをかける役割を持っています。
この仮声帯を適度に寄せられるようになると、呼気圧を強めても息が暴れず、声が太く安定します。
まずは、仮声帯を動かす感覚をつかむために「声のひっくり返り」を利用します。
裏声で低音を出そうとしたときや、地声で高音を出そうとしたときに「ポコン」と声が裏返る瞬間があります。
この現象は、仮声帯が急に寄ったり離れたりすることで、空気の流れが変化して起こるものです。
つまり、声がひっくり返る瞬間に、仮声帯が最も大きく動いているということです。
この反応を意図的に起こすことで、仮声帯が寄る感覚を体に覚えさせます。
まず、C4〜F4あたりでウィスパーボイスを出してみてください。
ウィスパーボイスは仮声帯が開いた状態なので、息がせき止められていません。
そのまま音程を変えずに、声量だけを少しずつ上げていきます。
すると、あるタイミングで声が「ポコン」とひっくり返る瞬間が訪れます。
このひっくり返ったあとの声が、仮声帯が寄って息を堰き止めている状態です。
声が急に太くなり、ボリュームを上げやすく感じたら、仮声帯が正しく寄っている証拠です。
このひっくり返りを意図的に起こせるようになるまで繰り返します。
一度その感覚をつかめば、仮声帯を意識的に寄せることができるようになります。
慣れてきたら、「んー」「ねー」「のー」などの軽い発声に切り替えてみましょう。
息が抜けず、音の芯がはっきりしていれば、堰き止めが保たれたまま発声できています。
次の段階では、仮声帯のコントロールをさらに細かくしていきます。
「ウィスパー」から「通常の声」に切り替える練習を、同じ音程でゆっくり行います。
この切り替えの瞬間に、喉の奥で軽く空気が詰まるような感覚があれば、それが堰き止めの動きです。
息を押し出すのではなく、“出そうとする息を留めながら鳴らす”感覚をつかむことが最大のポイントです。
堰き止めが安定すると、呼気圧が逃げずに保たれるため、横隔膜で作られた下圧がしっかり声帯に伝わります。
その結果、喉を締めなくても太く、遠くまで届く声が出せるようになります。
仮声帯を意識的に動かし、息が流れそうで流れない状態を維持することが、正しい堰き止めの第一歩です。
よくある質問
Q1. 声が弱々しくて、息が抜けるような声になってしまいます。どうしたらいいですか?
息が抜けるような声になるのは、空気が外に流れすぎてしまっているためです。
まずは「息を出そう」とせずに、「息が止まりかけている」ような感覚を作ってみましょう。
ため息を途中で止めるように「はぁ…(止)」とやると、喉の奥で少し空気が溜まるような感じがします。
この“わずかな抵抗”ができると、空気が逃げずに声が太く安定します。
Q2. 大きな声を出そうとすると喉が締まって苦しくなります。
それは、息を強く出そうとして喉で押さえつけている状態です。
大きな声を出すには、喉を使うのではなく、息の流れ方を変えることが大切です。
息を強く「押し出す」よりも、「流れそうで流れない」くらいの状態を作ると、喉を締めなくても声が響くようになります。
息を止めすぎず、でも勢いよく出しすぎず、その中間を探すのがコツです。
Q3. 息を止めるようにすると、苦しくなって声が出ません。
「止める」と意識しすぎると、喉を閉めてしまう原因になります。
大切なのは、完全に止めるのではなく「止まりかけている状態」を作ることです。
ため息をゆっくり出している途中で少し留めてみると、喉の奥が軽く閉まるような感覚があるはずです。
この軽い抵抗をキープしながら声を出すと、自然と安定した響きが得られます。
Q4. 息を少なくしたら声が小さくなってしまいます。
息を「少なく出す」ことと、「堰き止めてコントロールする」ことは違います。
息を少なくしすぎると声も小さくなりますが、空気が流れそうで流れない状態にできると、少ない息でもしっかりした声が出せます。
声が小さくなるときは、息を止めすぎているか、逆に出しすぎている場合が多いです。
「息が喉の奥で少し滞留している感じ」を意識してみましょう。
Q5. 練習するときに注意した方がいいことはありますか?
喉に力を入れないこと、そして息を勢いよく出そうとしないことです。
どんな練習でも、「息を出す」のではなく「息を留めて声を出す」つもりで行いましょう。
一番良い練習法は、軽いため息から「んー」や「うー」と優しく声を出すことです。
喉が楽なまま声が出ていれば、空気の流れが正しくコントロールできている証拠です。
まとめ
いかがでしたでしょうか!
声の不具合には必ず理由があり、その理由を原因から解決していくのがボイストレーニングです。
歌を才能のせいにして諦めてしまうのは本当にもったいないことです。
夢を諦めたくない人は、是非東京のボイトレスクール「WACCA MUSIC SCHOOL」の無料体験レッスンにお越しください!
自分の声を正しく理解し、鍛えることで誰でも確実に変わることができます。
それでは!
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