滑舌が悪くて困っていませんか?
滑舌が悪いと、コミュニケーションがうまくいかず、誤解を招くこともあります。
しかし、適切なトレーニングと生活習慣の見直しで改善が可能です。
本記事では、滑舌を改善するための効果的な方法を詳しく解説します。
今日から実践できるエクササイズや生活習慣のアドバイスを参考に、自信を持って話せるようになりましょう。
発音のメカニズム
滑舌を良くするためにはまず我々の出す言葉がどのように作られているのかを知る必要があります。
以下に言葉が口から出るまでのプロセスを示します。
1.呼吸(空気の供給)
声を出すためには、まず肺から空気が供給される必要があります。息を吸い込んで肺に空気を貯め、それを声帯に向けて押し出すことで、音が生成されます。
(呼吸に関して詳しくはボイトレとは?をご覧ください。)
2.声帯の振動
気管から喉頭(のど)に入った空気は、声帯を通過します。声帯は喉頭の中にあり、空気が声帯を通過するときに振動します。この振動が音波を作り出し、基礎的な声の音が生成されます。
3.共鳴(音の増幅と修飾)
声帯で作られた基本的な音は、咽頭、口腔、鼻腔といった体内の共鳴腔(声道)を通り抜けながら増幅され、修飾されます。このプロセスによって、声の音質や響きが決まります。
4.音声の形成(発音)
口腔内の舌、唇、軟口蓋などの「構音器官」が協調して動き、声道を特定の形に変化させることで、特定の音(例えば母音や子音)を形成します。
5.音波の放出
形成された音声が口から放出され、周囲の空気に伝わって音波として伝わります。これが、他人に聞こえる「声」となります。
この一連のプロセスが非常に高速で行われることで、私たちは流暢に話すことができます。
滑舌のおいて特に重要なのは「3.共鳴(音の増幅と修飾)」と「4.音声の形成(発音)」なので、このコラムもそこに焦点を当てて書いていきます。
滑舌が悪くなる原因
滑舌の悪さは多くの場合「構音器官」の筋力低下が原因です。
なぜなら、我々の発する言葉は先ほどの「3.共鳴(音の増幅と修飾)」の説明に出てきた「声道」に、「4.音声の形成(発音)」の説明に出てきた「構音器官」が影響を与えることで作られているからです。
例えば早口で話すことが多い場合、一文字一文字の発音が曖昧になるので構音器官の筋力が弱くなっていき、滑舌が悪くなる傾向があります。
これ以上の筋力低下を起こさないためにも、この後紹介するトレーニングで、積極的に構音器官を動かしていきましょう。
構音器官の種類
先ほど名称だけ紹介した構音器官を細かく紹介していきます。
1. 舌
舌は舌の内部にある「内舌筋」と舌の外部から舌に接続している「外舌筋」に分かれ、それぞれ役割が違います。
内舌筋は主に舌の形を変える役割があり
外舌筋は舌全体の位置を動かす役割があります。
この内舌筋・外舌筋の働きにより先ほど登場した声道(咽頭、口腔、鼻腔といった体内の共鳴腔)の形が変えられることで母音がハッキリと区別されます。
また、舌が上顎や歯茎に接近して空気の通り道を遮断することで様々な子音を生み出すことができます。
言葉は母音と子音から成り立っているので、その両方に関わる舌の役割は自ずと重大になります。
2.唇
唇を閉じたり、開いたり、前に突き出したりなど、唇の動き全体を制御しています。
唇と発音の関係性ですが、実はパ行・バ行・マ行は唇を一度閉じないと発音することができません。
また、「ウ」母音や「ワ」「ヲ」などは一度唇を前に突き出さないと発音できないので、その生成にも関与しています。
ちなみに、唇の両端を横に引く「イ」母音は、笑顔を作るときに使われる「笑筋」が作用していると言われています。
3.軟口蓋
軟口蓋は、声道である咽頭腔(中咽頭)と鼻腔とを連結して繋げたり、挙上して鼻腔を遮断したりする「弁」として働きます。
わかりやすく言うなら、軟口蓋が上に上がれば口へ、下に下がれば鼻へ空気が流れるということです。
軟口蓋は、母音や鼻音(マ行やンなど)以外の子音の構音時に上に上がり、咽頭後壁(喉ちんこの辺り)に接して鼻咽腔を閉鎖します。
そして、呼吸や鼻音の構音時には軟口蓋は下降します。
滑舌のトレーニング方法
構音器官の筋力を鍛えることで、滑舌が改善されるだけでなく、発声もクリアになります。以下のトレーニングを毎日行うことで、構音器官の筋力を強化し、滑舌を向上させることができます。
舌のトレーニング
1.舌出しトレーニング
口を大きく開けて舌をできるだけ前に出し、5秒間その状態を保ちます。次に、舌を口の中に引き戻し、上顎に強く押しつけるようにして5秒間キープします。この動きを1セットとして、10セット行います。このトレーニングは舌全体の筋力を鍛えることができます。
2.タングツイスト
舌を使って口の中で円を描くように動かします。右回りに10回、左回りに10回行います。舌をできるだけ大きく動かし、口の内側に触れるように意識してください。これにより、舌の柔軟性と筋力が向上します。
3.舌を使った発音練習
「ラリルレロ」の音を強調して発音します。舌先を上顎にしっかりとつけて、はっきりと発声することを心がけましょう。これを10回繰り返し、3セット行います。この練習は、舌先の筋力と敏捷性を鍛えるのに効果的です。
4.舌先を使ったトレーニング
舌先で下の前歯の裏側を強く押します。5秒間そのまま保ち、次に舌先を上の前歯の裏側に強く押しつけて5秒間キープします。これを10回繰り返します。このトレーニングは、舌の前方の筋力を特に鍛えるのに役立ちます。
5.アイウエオ体操
「アイウエオ」の発音を舌を意識して行います。口を大きく開け、各母音をしっかりと発音し、舌の動きを意識しましょう。これを10回繰り返し、2セット行います。舌全体の筋力を均等に鍛え、発声が明瞭になります。
唇のトレーニング方法
1.口の形を保つトレーニング
唇を「イ」の形にして、しっかりと引き締めた状態を10秒間保ちます。次に「ウ」の形に変えて、同じように10秒間保ちます。この「イ」と「ウ」を交互に繰り返し、1セット5回を目標に行いましょう。
2.パタカラ体操
「パ」「タ」「カ」「ラ」の発音を明瞭に行います。一音一音をしっかりと唇で形作りながら、強めに発声します。これを10回繰り返すと、唇の筋力を鍛えると同時に、舌の動きもスムーズになります。
3.ペンを使ったトレーニング
口にペンを横にしてくわえた状態で「アイウエオ」と発声します。この方法では、唇に適度な負荷がかかり、筋力が強化されます。1セット10回を目安に、2セット行いましょう。
4.リップロール
唇を軽く閉じ、息を強く吹き出して唇を震わせます。唇が振動することで筋力が鍛えられ、滑舌も改善されます。これを10秒間行い、3セット繰り返します。
軟口蓋のトレーニング方法
1.ハミング(鼻歌)トレーニング
唇を閉じたまま「んー」とハミングを行います。このとき、軟口蓋を意識して、息が鼻から出るようにします。最初は低い音から始めて、徐々に音程を上げていきます。10秒間を1セットとし、3セット行いましょう。このトレーニングは、軟口蓋の上げ下げをスムーズにし、鼻音のコントロールが向上します。
2.あくびストレッチ
大きなあくびをするように口を開け、軟口蓋をしっかりと上げる感覚を覚えます。この状態を数秒保った後、口を閉じます。これを1セットとして、5セット行います。あくびをすることで、自然に軟口蓋が持ち上がり、筋力が鍛えられます。
3.「カ・ガ」発音トレーニング
「カ」と「ガ」の発音を交互に繰り返します。これにより、軟口蓋を持ち上げる筋肉が鍛えられます。発声を強く行い、特に「ガ」の発音で喉の奥をしっかりと意識しましょう。これを10回繰り返し、3セット行います。
4.口蓋ストレッチ
口を閉じ、舌先で上顎の後ろ側を軽く押します。このとき、軟口蓋を持ち上げる感覚を意識し、5秒間その状態を保ちます。これを1セットとして、10セット行いましょう。
これらのトレーニングで構音器官の筋力は向上し、滑舌の改善に役立ちます。
日々の練習が重要で、続けることで確実に効果が現れるので、可能な限り毎日続けていきましょう。
滑舌トレーニングの継続方法
地道な滑舌トレーニングを毎日続けるためには、いくつかのコツがあります。これらを取り入れることで、モチベーションを維持し、習慣化が容易になります。
1.目標を明確にする
具体的な目標を設定しましょう。「1ヶ月で高音を楽に出せるようになる」や「滑舌を改善する」など、達成可能で具体的な目標を掲げることで、練習に取り組む意欲が湧きます。
2.短時間で行う
無理なく続けられるように、1回の練習時間を短く設定します。10〜15分の集中した練習を毎日続ける方が、長時間の不定期な練習よりも効果的です。
3.スケジュールに組み込む
練習を日常のスケジュールに組み込み、決まった時間に行うことで、習慣化が進みます。朝のルーティンや就寝前の時間など、自分にとって続けやすいタイミングを見つけましょう。
4.進捗を記録する
練習の内容や感覚、達成感を記録に残すと、自分の成長を確認でき、モチベーションが維持しやすくなります。週ごとや月ごとに振り返ることで、次の目標も立てやすくなります。
これらのコツを実践することで、地道な滑舌トレーニングを毎日継続しやすくなります。継続は力なり、日々の積み重ねが確実な進歩につながります。
まとめ
いかがでしたでしょうか!
滑舌は第一印象を左右する要素でもあり、声を使ったお仕事をしていない方にとっても重要です。
今回の記事を参考に少しづつでもいいのでトレーニングを始めてみましょう!
それでは!