WACCA MUSIC SCHOOL

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【地声を高くするための必須条件】声門上圧を生み出す「仮声帯」と「喉頭蓋」を徹底解説

最近高音のアーティストがすごく流行っていますよね。
Mrs.GREEN APPLE、Omoinotake、Da-iCE、優里などなど、、、

「こんな高い声出ないよ〜」とカラオケで困っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

今回は本来裏返って裏声になってしまう高さの音を地声感を持って出すための必須条件をお伝えしていきます。

ミックスボイスやベルティングボイスを出したい方にも必須の知識となりますので、是非最後までご覧になってください。

それではいってみましょう!


今すぐ地声を高くしたい方へ

地声とは?

そもそも「地声」とはなんなのでしょうか。

説明されなくてもなんとなく「これが地声かな?」という判別がつく人も多くいらっしゃるかと思いますが、生徒さんの中には
「地声がどんなものがわからない」
「自分の出している声が地声なのか裏声なのかがわからない」
という方もかなり多くいらっしゃるので、ここではまず地声と裏声の見分け方に関して触れておきます。

地声と裏声の見分け方

「地声」という概念には
①周りの人が聞いて地声だと感じるかどうか
②自分が出していて地声だと感じるかどうか

この2つの側面があるので

「周りの人が地声だと感じる声」が出ている時の声帯の状態を知り、
「その状態になれているかどうかを自分で判断する方法」がわかれば、意識的に地声を使いこなすことができるはずです。



まず声帯の状態に関してですが
歌唱中の人の声帯を特殊なカメラを使って撮影すると、我々が地声だと感じるようなしっかりした声を出している時の声帯は「隙間無く閉じているように」見えます。

それに対して、裏声っぽい気息的な声を出している時の声帯は「隙間が開いているように」見えます。

つまり「声帯が隙間なく閉じている時は、聞いていて地声だと感じる声が出る」ということです。

(※注)裏声っぽい声でも音が出ている以上声帯が触れ合う瞬間はあります。
地声は元々閉まっている声帯の間を押し広げるような形で空気が通り、それに伴って振動が起こるので声帯が閉じているように見えます。
裏声は元々開いていたり、隙間が開いている声帯の間を空気が通り抜けることによってベルヌーイ効果が起こり、声帯が瞬間的に接触して振動が起こるので隙間が開いているように見えます。



声帯が閉じれているかどうかは自分で感じることはできませんが、
「声を大きくする際に力が入るかどうか」で、ある程度判断することができます。

声のボリュームは肺から声帯までの空気圧(声門下圧といいます)の大きさに比例していると言われているのですが、声帯が開いてしまっているとそこから空気が抜けてしまい、声門下圧を大きくすることができません。

つまり、裏声は「ボリュームをうまく大きくできない」という特徴を持っているということです。

裏声のままボリュームを大きくしようとすると、うまく力が入らず大きくできないはずです。

反対に、声帯が閉じていれば空気が抜ける心配がないため、声帯が耐えられる限界まで声門下圧を大きくしていくことができます。



まとめると
違和感なくボリュームを大きくできる声が地声。
うまく力が入らずボリュームが大きくできない声が裏声だと判断できます。
※上の図は人体を横から見た際の断面図。
喉仏辺りの位置に声帯がある。
肺からの空気圧が声帯にぶつかることで声帯が振動し、音が出る。

※下の図は喉仏を上から見た際の断面図。
左が呼吸時で、右が発声時。

(出典:益田 慎(監修)「Crosslink 言語聴覚療法学テキスト 発声発語・摂食嚥下の解剖・生理学」株式会社メジカルビュー社、2022)

なぜ地声で高い音が出せないのか

さて、地声がなんなのか大体わかったところで、なぜ地声で高音を出すのが難しいのか説明していきます。

そもそもなぜ地声で高音を出そうとすると裏声にひっくり返ってしまうのでしょうか。

答えは「肺からの空気圧を声帯で受け止められなくなるから」です。

その理由はここまでの流れの中にヒントがあります。



ここまでの説明で、ボリュームを違和感なく大きくできる声が地声だと分かりました。

なぜボリュームを大きくできるのかというと、声帯が閉じているからでしたね。

しかし、ボリュームを大きくできる条件は声帯が閉じていることだけではありません。
もう一つ条件があります。

それは「声帯が分厚くなっている」ことです。

・声帯が分厚く
・しっかりと閉じている
この2つの条件が揃って初めてボリュームを大きくするための土台が整い、地声だと呼べる声が出せるのです。

しかし、この条件は高音を出す際の条件と全く噛み合っていません。

高音は声帯が薄く引き伸ばされていないと出ないので、分厚くなっている状態というのは高音が1番出ずらい状況と言っても過言ではないのです。

声帯が分厚い状態のまま音高を上げるには、声門下圧を強くして声帯の振動回数を無理矢理上げるしかないので
「声門下圧に声帯が耐えられる限界まで音高を上げたら、あとは裏声にして圧力を逃す」という選択肢しか選べなくなってしまうのです。

この方法だと音高は上げられてもG4辺りが限界なので、最近流行っている高音の曲は歌えるはずがありません。

これが地声で高音を出そうとすると裏声にひっくり返ってしまう理由です。



※図は声帯を真正面から見た断面図。
声帯は自身の分厚さを自在に変えることができる。
分厚ければ分厚い程強い声門下圧に耐えられ、逆に薄過ぎると声門下圧に吹き飛ばされてしまい、まともな声にならなくなる。  

(出典:益田 慎(監修)「Crosslink 言語聴覚療法学テキスト 発声発語・摂食嚥下の解剖・生理学」株式会社メジカルビュー社、2022)

地声を高くする方法

ここまでの内容だと、地声で高い音を出すのは不可能なのではないかと思えてくるかもしれません。

しかし、ご安心ください。
方法はちゃんとあります。

問題の確信は
「ボリュームを違和感なく大きくできる声を出すために、声帯を分厚くするという手段を取ってしまっている」
という部分にあります。

もしも声帯を分厚くしなくても声門下圧に耐える方法があるのであれば、ボリュームを違和感なく大きくできる声を維持したまま声帯を薄く引き伸ばして音高を上げていくことが出来るはずです。

その方法こそが、今回のメインテーマである「声門上圧(セイモンジョウアツ)」です。

声門上圧の作り方

声門下圧は声帯から肺まで、つまり声帯の下側の空気圧のことでした。

声門上圧はその逆で、文字通り声帯の上側の空気圧のことです。

声門下圧に吹き飛ばされないために声帯を分厚くしていたわけなので、声門下圧に負けないレベルの声門上圧が同時に存在していれば、そもそも分厚くする必要が無くなる、というわけです。

しかし、声門下圧は声帯が閉じていれば作れましたが、声門上圧はどのように作れば良いでしょうか。

声帯の上側にあるのは外気と直接接している「口腔」なので、空気の流れを制限する器官が無く、一見空気圧が作れなさそうです。

しかし、実は空気の流れを制限する器官は存在しています。
それがタイトルに出てきた「仮声帯(カセイタイ)」「喉頭蓋(コウトウガイ)」という器官です。

それぞれをじっくり解説していきます。




仮声帯とは

まず仮声帯から説明していきます。
(出典:歌声クリエイター ゆーま 『禁断のボイストレーニング』、Online Vocal Academy、2021)

こちらの図は喉を正面から見た時の断面図です。
黒っぽく塗られている部分が空洞の部分です。
「仮声帯」と書いてある白い部分が仮声帯です。

声帯の上に垂れ下がるような形で付いています。

「下に垂れ下がるような形」は下からの空気圧を受け止めるのに最適な形状で、まさに声門上圧を生み出すためにある器官と言っても過言ではありません。

この仮声帯を使いこなし、声門上圧を適切に生み出せるようになって初めて、高音域を自在に地声で出せるようになるのです。
(仮声帯についてはボイトレとは?でも触れています。)




仮声帯のトレーニング方法

仮声帯の練習は平たく言えば「がなり声」の練習のことです。

がなり声独特の「ブルブル」というノイズは仮声帯が振動して出ています。

がなり声を自由自在に出せるように練習することで、声門上圧を作り出す機構を手にすることができます。

それでは練習方法について解説していきます。

まず、仮声帯を振動させてがなり声を出すには仮声帯を寄せなければなりません。

仮声帯が寄る条件は「声帯では受け止めきれないレベルの声門下圧がかかった時」です。

「声帯では受け止めきれないレベルの声門下圧」は
「限界を超えた超でかい声」や
「咳」などで再現することが可能です。

最初は難しいのでまず「咳払い」から導入することをオススメします。

まず口を閉じて「ン」の発音で軽く咳払いをしてみてください。

すると、喉の辺りで「ブルブルブル」と大きな振動を感じないでしょうか?

それが「仮声帯が振動した証」です。

まずはこの感覚に慣れていただきたいので
「ン」の咳払いで音程を上下させる練習をしてみてください。

音程はC3〜G3辺りが一番出しやすいと思います。

注意点としては、決してロングトーンしないでください。
仮声帯の振動には痛みが伴うので、出すのは一瞬でOKです。

練習していくと痛くなくなってきます。

痛みが和らいできたら、徐々にロングトーンしたり、音程を移動させたり、発音を「アイウエオ」に変えてみたりしてみましょう。

これが「地声がなり」の練習です。

地声がなりはC3〜E4まで出すことができるので、この範囲をどんな母音でも痛みなくロングトーンできればかなりすごいです。

無理せず練習してください。



仮声帯の振動に慣れてきたら、これを裏声でも行います。

やり方は同じです。
口を閉じて、裏声の「ン」で軽く咳払いをします。

裏声の場合、音程はF4より上であればどこでも構いません。
出しやすい音程で出してください。

すると、うまくできれば地声の時と同様に「ブルブルブル」と振動が感じられるはずです。

振動を感じる場所は喉ではなく上顎の辺りが中心になると思います。

これも最初はロングトーンせず一瞬で構わないので、遊び感覚で音程を上下させてみてください。

これが「裏声がなり」の練習です。

裏声がなりはF4から、頑張ればC6くらいまで出すことができます。

しばらくは「地声がなり」と「裏声がなり」を出し慣れる練習をしましょう。

がなりの練習は喉を壊すリスクがかなり高いので、練習は短時間で行い、休息を十分に取ることを忘れないでください。

「10分練習したら3日休む」くらいのペースで良いと思います。



それぞれのがなりに十分慣れてきたら、いよいよ「ミックスがなり」の練習をしていきます。

すみませんネーミングは適当です。
地声がなりの限界であるE4以降の音程を地声の感覚で出すことを勝手にミックスがなりと名付けました。

ミックスがなりの音域はC4~C5くらいです。

E4〜C5の音域は「地声体感なのに振動は上顎で感じる」という、地声がなりと裏声がなりの両方の性質を持ち合わせたがなり声でないと、地声体感で発声することができません。

この「ミックスがなり」ができるようになると、クリーントーンでの発声の安定感が格段に上昇し、声門上圧の威力を良い意味で思い知ることになると思います。

やり方ですが、個人的には裏声がなりの音程を少しずつ下げていき、下げると共に地声にしようとしていくのが1番やりやすいと思います。

「地声がなりの音程を上げていく」という戦法は絶対にオススメしません。

余程勘の良い人でないと、地声体感のまま喉から上顎へ振動する箇所を移動していけないからです。



がなりの練習全てで意識して欲しいポイントは
・ノイズの粒を揃えること
・ノイズが入る間隔を一定にすること

この2つです。

がなり声を出している間はブルブルブルというノイズが規則正しく声に乗って欲しいということですね。



以上が仮声帯の練習方法になります。
文章だと非常に伝えるのが難しいので、やり方がよくわからない人は
東京のボイトレスクール「WACCA MUSIC SCHOOL」の無料体験レッスンへお越しください。




喉頭蓋とは

(出典:益田 慎(監修)「Crosslink 言語聴覚療法学テキスト 発声発語・摂食嚥下の解剖・生理学」株式会社メジカルビュー社、2022)

「喉頭蓋(コウトウガイ)」は飲み込んだ食べ物が気道に行かないようにするための蓋です。

物を飲み込む時に気道を塞ぐ形で倒れるので、声門上圧が作ることができます。




喉頭蓋のトレーニング方法

喉頭蓋の運動は喉仏と密接な関係があります。

みなさん唾を飲み込んでみてください。

飲み込む時に喉仏が上がるのが分かりましたでしょうか。

このように、何かを飲み込む時は必ず喉仏が上がります。

喉頭蓋が倒れるのは何かを飲み込む時なので、

飲み込む=喉頭蓋倒れる=喉仏上がる

つまり

喉頭蓋倒れる=喉仏上がる

という図式が成り立つのです。

意識的に喉仏を上げて発声する訓練をすることで喉頭蓋を倒し、声門上圧を作り出すことができます。

喉仏は「かわいい声」を出すことで上げることができます。

アニメに出てくる、年齢の幼いキャラクターの声真似をしてみてください。

鼻にかかった変な声になってしまってもOKです。

極端に誇張してモノマネした方が喉仏は上がりやすいので、オーバーにやってください。

発音は「ネイ」が良いと思います。

ネイで上手にモノマネができたら、後は少しずつ音程を上げていってください。

できればC5辺りまで地声感を持って出したいので、そこまで裏声にならないように気をつけながら上がっていきましょう。

最初からうまく行く人はなかなかいないですが、上手になってくると鼻根の辺りに声が集まる感覚になり、地声感が保てるようになります。

根気強く練習してください。

まとめ

いかがでしたでしょうか!

今回の内容は歌を歌う以上避けて通れない内容なので、是非とも理解して練習に取り組んでいただきたいです!

ご不明点などは是非東京のボイトレスクール「WACCA MUSIC SCHOOL」の無料体験レッスンにてお気軽にご質問ください!

それでは!