こんにちは!WACCA MUSIC SCHOOLです。
「喉を強くしたい」「もっと楽に、長く歌えるようになりたい」と感じたことはありませんか?
歌を続けていると、喉が疲れやすかったり、強く出そうとしたときに苦しくなったりと、喉に関する悩みは誰でも一度は経験します。
では、「喉を強くする」とは、実際にはどういう状態を指すのでしょうか。
このコラムでは、喉を無理に使うのではなく、発声の仕組みを整理しながら、結果として「喉が強くなっていく状態」について順を追って見ていきます。
まずは、多くの人がイメージしている「喉が強い」という言葉の意味から確認していきましょう。
「喉が強い」とはどういう状態なのか?
一般的に「喉が強い」と言われるのは、歌っても喉が疲れにくい、声が枯れにくい、高い声や大きな声でも不調が出にくい、こうした状態を指していることがほとんどです。
ただし、この「強い」という言葉は、喉そのものが特別に頑丈である、という意味で使われているわけではありません。
多くの場合は、歌っている最中に状態が崩れにくく、コンディションが安定しやすいことをまとめて「強い」と表現しています。
つまり「喉が強い」とは、発声を続けても喉の調子が乱れにくい状態、声が安定して出続ける状態を指す言い方だと整理できます。
この言葉をそのまま受け取って「喉を鍛える」という方向に進むと、改善の焦点がずれることがあります。
次の章では、喉を強くすることを目標にする必要が本当にあるのかを整理します。
喉を強くする必要は無い
この前提に立つと、「喉を強くする」という発想自体がずれていることが分かります。
喉が苦しい状態を前提にして、その苦しさに耐えられるようにするという考え方は、一見前向きに見えますが、根本的な負担の構造は何も変わっていません。
苦しいものは、耐えられるようになっても苦しいままです。
目指すべきなのは、喉を強くして「耐える」ことではなく、「喉が苦しくならない状態を作ること」です。
喉が苦しくならない状態が作れれば、自然と疲れにくくなり、枯れにくくなります。
それが結果として「喉が強い」と見えるだけであり、本質的には「強さ」ではなく「負担の少なさ」こそが改善の指標となります。
喉が苦しくない発声とはどんな発声?
喉の苦しさは、「空気圧をどこで受け止めているか」によって説明できます。
声を出すとき、体の中では空気圧が生まれます。この空気圧は本来、お腹の筋肉で作られ、息として上に流れていくものです。
しかし、声帯を強く閉じようとしすぎると息の流れが途中で止まり、行き場を失った空気圧をどこかで受け止めなければなりません。
その役割をしてしまうのが喉です。
お腹で生み出される空気圧は非常に強く、喉のような小さな器官がそれを直接受け止めるのは本来不可能に近いことです。
喉が苦しくなるのは、「強い空気圧を喉で堪えようとしている状態」だからです。
一方、喉が苦しくない発声では、空気圧はお腹側で生まれ、息として流れ続けています。声帯はその流れの中で必要な分だけ閉じ、無理なく振動します。
このとき、空気圧を喉で受け止める必要がないため、喉に余計な力がかからず、発声が安定し、長く歌っても疲れにくくなります。
つまり、「喉が苦しくならない発声」とは「空気圧を喉で受け止めない状態」であり、それこそが「喉が強い」と見える本当の仕組みです。
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なぜ人は喉で息を堪えてしまうのか
喉で息を堪えてしまう人は少なくありません。
ここまでで整理した通り、苦しさの正体は「息の流れが止まり、空気圧を喉で受け止める状態」です。
つまり、苦しくならないための方向性は明確で、「常に息が流れている状態」を保つことにあります。
ではなぜ、多くの人がその逆である「息を止める方向」に入ってしまうのか。
その理由は、大きく二つに分けられます。
①呼吸がうまく支えられていないから
息が持たない人は、そもそも呼吸が「支えられていない」ことが多いです。
呼吸を「支える」とは、息を吐いている間も下腹部と脇腹の張りを保ち、胸郭が一気にしぼまないようにしながら、息を一定の速さで出し続けることです。
この支えが弱いと、息は吐き始めで一気に出てしまい、すぐに息が足りなくなります。
すると体は「このままだと息が足りない」と判断し、息を止めて節約しようとします。
その止め役をしてしまうのが喉です。
喉で息を堪えると、息の流れがそこで途切れ、空気圧の逃げ道がなくなります。
その結果、喉が空気圧を受け止める形になり、圧迫感や苦しさが生まれます。
つまり「息が持たない」のは、息が少ないからではなく、息の出方が偏っていることが原因になっている場合があります。
だからこそ、喉で止めて耐えるのではなく、呼吸を支えて「息が流れたまま持つ」形に切り替えることが大切です。
②強い声を出すために声帯を強く閉じたいから
強い声を出そうとした瞬間、人の体には「力を出すときの反射」が働きます。
重い物を持つときや踏ん張るときに、無意識に息を止めて体を固めるのと同じ反射です。
歌でも同じことが起きると、声を強く出そうとした瞬間に息の流れを止め、体を固定しようとします。
このとき、声帯を閉じたい意識よりも先に、息を止める動きが喉で起きてしまうことがあります。
息が止まると、下から上がってくる空気圧の逃げ道がなくなります。
その結果、喉が空気圧を受け止める形になり、圧迫感や苦しさが生まれます。
つまり苦しさの原因は、声帯を閉じたことではなく、強い声を出そうとした瞬間に反射的に息を止めてしまうことです。
この反射が強い人ほど、声を出すたびに喉で堪える状態に入りやすくなります。
喉に負担をかけない声の出し方【呼吸編】
喉に負担がかかる大きな原因は、息の流れが止まり、空気圧を喉で受け止めてしまうことです。
逆に言えば、「息が止まらずに流れ続けている状態」を作ることができれば、喉で息を堪える必要はなくなります。
そのために重要になるのが「呼吸の支え」です。
呼吸の支えがあると、喉で息を止めなくても、息をある程度長く使い続けることができます。
これは、息の量が増えるからではありません。
吐き始めから終わりまで、息の出る速さが大きく変わらない状態を作れるからです。
支えがない場合、息は吐き始めに一気に出てしまいます。
すると途中で「もう息が足りない」感覚が生まれ、その不足を補うために、喉で息を止めて節約しようとします。
この瞬間に、息の流れは途切れ、空気圧を喉で受け止める状態に入ります。
一方、呼吸の支えがある状態では、吐き始めに息が出過ぎることがありません。
息が「一定の速さ」で出続けるため、途中で急に足りなくなる感覚が起きにくくなります。
その結果、喉で止めて調整する必要がなくなり、息の流れは自然に保たれます。
つまり、喉への負担が減るのは、息を「止めなくて済む」からです。
呼吸の支えを作る具体的な方法
まず腹式呼吸で息を吸い、下腹部を「前に膨らませる」ようにします。
このとき、お腹を力で押し出すのではなく、息が入ることで自然に膨らむ感覚を使います。
次に、その下腹部の膨らみを、発声中も「維持する」意識を持ちます。
声を出した瞬間にお腹が一気にへこむと、息は吐き始めで出過ぎてしまいます。
そこで、下腹部を「外側に貼り続ける」ような感覚で、すぐに戻らないように保ちながら声を出します。
この「膨らみを保ったまま声を出す」動きによって、息の出る速さが自然に揃います。
下腹部が急に戻らなければ、息は止めなくても安定して流れ続けます。
ここで大切なのは、息を「強く押し出そう」としないことです。
押し出そうとすると、お腹の膨らみは一気に潰れ、支えが失われます。
あくまで、膨らみを保つことで結果的に息が一定に流れる状態を作ります。
この状態が作れると、息は常に流れ続け、喉が息を堪える必要がなくなります。
その結果、喉への負担が減り、苦しさのない発声につながります。
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喉に負担をかけない声の出し方【発声編】
ここまでの話の結論はシンプルで、苦しさは「息の流れが止まり、空気圧を喉で受け止めてしまうこと」から生まれます。
逆に言えば、息の流れが保たれている限り、喉で堪える状態に入りにくくなります。
発声編では、この「息が流れている範囲」を自分の体で覚えるための練習を紹介します。
ふー→うー練習で「息が止まる瞬間」を見つける
まず、「ふー」と息だけを吐きます。
このときは声を出さず、息が一定に出続ける感覚だけを確認します。
次に、「ふー」の息を吐き続けたまま、途中から「うー」と声を乗せてみてください。
ポイントは、声を乗せても「ふーの息の流れが残ったまま」になることです。
もし「うー」を出した瞬間に、ふーの息の流れが消えたと感じたら、それは喉で息を堪えた証明になります。
息の流れが止まった時点で、空気圧の逃げ道がなくなり、喉が受け止め役になりやすくなるからです。
この状態で声を強くしようとすると、苦しさが増えやすくなります。
「息を堪えていない範囲」を体で覚える
この練習の目的は、「声を出しても息が流れ続ける範囲」を見つけて、体で覚えることです。
声を小さめにして、「ふー」の流れが残るところから始めてください。
そこから少しずつ声を強くしていき、どこで息の流れが消えるかを確認します。
息の流れが消える手前までが、喉で堪えていない範囲です。
この範囲を知らないまま音量を上げると、反射的に喉で止める方向へ入りやすくなります。
強い声は「息が流れている範囲内」で上げる
強い声を出したいときは、この「息が流れている範囲」の中で音量を上げるようにします。
息が流れ続けている限り、空気圧を喉で受け止める必要がありません。
そのため、苦しさが出にくいまま、声を強くしやすくなります。
逆に、息の流れが消えている状態で音量を上げると、喉で空気圧を堪える方向に固定されます。
この固定が続くと、強い声を出すほど苦しくなり、喉への負担も増えやすくなります。
この練習でまず身につけたいのは、強い声そのものではありません。
「息が流れている範囲のまま声を乗せる」という土台です。
土台ができてから音量を上げれば、苦しくない範囲で強さを作ることが可能になります。
よくある質問
息を流したままだと声が弱くなりませんか?
息を流したままだと「声が軽くなる」「弱くなる」と感じる人は多いです。
これは、これまで「喉で空気圧を受け止める強さ」を「声の強さ」だと認識してきたためです。
実際には、息が流れている状態でも、声の強さは作れます。
ただしそれは、喉で堪える強さではなく、息の流れの中で作られる強さです。
最初は物足りなく感じても、息が流れたまま声を保つ方が、結果的に安定した音量につながります。
息が流れているかどうかが分かりません
息の流れは、「感覚」だけで判断しようとすると分かりにくくなります。
そのため、先ほど紹介した「ふー→うー」の練習が有効です。
「ふー」の息を吐きながら声を乗せたとき、息の音や流れが完全に消えていなければ、流れは保たれています。
逆に、声を出した瞬間に息の気配が消える場合は、喉で止めている可能性が高いです。
息の流れは「ある・ない」で判断し、強弱で考えないようにしてください。
強い声を出すと必ず苦しくなってしまいます
強い声を出すと苦しくなる場合、多くは「音量を上げる前に息が止まっている」状態に入っています。
その状態で声を強くしようとすると、喉で空気圧を受け止めるしかなくなります。
大切なのは、息が流れている範囲を超えないことです。
まずは小さめの声で、息が流れ続ける感覚を保ちます。
その範囲の中で少しずつ音量を上げることで、苦しくない強さを作りやすくなります。
お腹に力を入れた方が支えになりますか?
支えを「力を入れること」だと考えると、逆に息が不安定になります。
必要なのは力みではなく、「下腹部の膨らみを急に戻さないこと」です。
力で押し出すと、息は吐き始めに出過ぎてしまいます。
支えとは、息の出る速さを揃えるための状態だと考えてください。
結果として息が流れ続ければ、それが正しく支えられているサインです。
この練習は高音にも使えますか?
はい、高音ほどこの考え方は重要になります。
高音が苦しい原因の多くは、音程そのものではなく、「息が止まった状態で出そうとしていること」です。
息が流れている範囲を保ったまま音程を上げることで、喉で堪える必要が減ります。
まずは低め〜中音域で「息が流れている感覚」を安定させてから、高音に広げていくのが安全です。
この順序を守ることで、苦しさを最小限にしたまま音域を広げることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
喉が苦しくなるときは、気合いや根性の問題ではなく、息の流れが止まってしまっていることが原因になっている場合が多いです。
今回紹介した呼吸と発声の考え方を使って、まずは「息が流れている範囲」を体で確認してみてください。
その範囲の中で少しずつ声を整えていくだけでも、喉の負担は大きく変わってきます。
焦らず、苦しくない出し方を基準に練習を積み重ねていきましょう。
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