みなさんこんにちは!
突然ですが、ミックスボイスって聞いたことありませんか?
高い声を出すテクニックとして必ず出てくるミックスボイス。
でも果たしてそんな声は本当に存在するのでしょうか?
今回はそんな疑問をスッキリ解消できるように、理論立ててミックスボイスを説明していきたいと思います!
それでは行ってみましょう!
ミックスボイスという声は無い
タイトルにもある通り「ミックスボイス」という種類の声はありません。
冒頭で勿体つけてすみません笑
ミックスボイスと名前を付けてしまうと、あたかもミックスボイスという特定の音質を持った声が存在するように思えてしまいますが、この誤解を解きたくて今回のコラムを書きました。
よく「今出したのがミックスボイスなんですけど」とおっしゃる生徒さんがいらっしゃるのですが、そのように仰る生徒さんのほとんどは、発声に悩みを抱えていらっしゃる生徒さんだったりします。
これには関連性があって、ミックスボイスという声があると信じている方が出す、いわゆる「ミックスボイスっぽい声」は、発声のバランスを狂わせてしまいやすい声なのです。
よく裏声で喉を締めていくとミックスボイスっぽくなるというお話を聞きますが、喉を締めることが発声のプロセスに入っているということは、ミックスボイスらしき声を出すと必ず喉が締まるということになりますよね。
それではダメなのです。
ミックスボイスは自然と行き着く「状態」を指しているのであり、人工的に生み出された特定の音質の声ではないのです。
発声の偏りの先にある崩壊
「ミックスボイスっぽい声」を出される方は発声のバランスが偏ります。
多くは喉仏を過剰に上げた細い声になっていて、その声を出し続けると、「ミックスボイスっぽい声」に関わらない筋肉(喉仏を下げる筋肉など)が次第に衰退していきます。
そうなると、ミックスボイスっぽい声に関わる筋肉が、衰退した筋肉の担っていた仕事を受け持たないといけなくなるので、筋肉がオーバーワークし始めます。
結果、声帯にポリープができたり、喉が締まって苦しいなどといった症状が起こり始めるのです。
ボイストレーニングは満遍なく全ての筋肉を鍛えるのが大原則です。
まずは働いていない筋肉を無くすことが始まりなのです。
働いていない筋肉が働き始めてようやく、オーバーワークしていた筋肉がリラックスできるようになるのです。
いきなりリラックスなんてできるわけがありません。
ミックスボイスっぽい声は、こういった発声の偏りを助長しかねない危険な概念だと思っています。
もしこのコラムを読んでいるあなたが今ミックスボイスっぽい声を練習している、もしくは既に出しているなら、それとは真逆の音質の声も練習するようにしてください。
細くてキンキンした声なら、太くて温かみがある声を練習し、スカスカと息漏れが多い声なら、ハッキリした地声を練習するのです。
特定の音質の声ばかりを練習するのは発声機能の崩壊を招きます。
ミックスボイスを練習することはそれほど危険な可能性を孕んでいるのです。

本当のミックスボイスへの道筋
みなさんが憧れるプロ歌手の方々は実に自然に、簡単そうに声を操っていますよね。
「そのためにミックスボイスが必要だから、ミックスボイスっぽい声を練習するんだ!」というループに陥ってしまうと思いますが、正しいルートはそっちではありません。
先程チラッと説明した通り、人間の体というのは動きの悪い筋肉の働きを動きの良い筋肉がカバーするようにできています。
そうなると、元々動きの良かった筋肉は本来のパフォーマンスを発揮できなくなり、苦手な分野の作業をさせられるようになり、どんどん疲弊していきます。
代表的なのが喉仏を上げる「甲状舌骨筋」です。
この筋肉は食べ物を飲み込む時に必ず動作する、「無かったら死ぬ」筋肉です。
だからどんな人でも、ある程度発達しています。
発達しているからといって、発声の際に必ず必要な「喉仏を固定する」という役割をこの甲状舌骨筋だけが担っていると、副作用として喉全体に「物を飲み込む時の動作」が強烈に起こり、喉が強烈に締まり、声帯が激烈に摩耗します。
このように、偏った発声の皺寄せは全て苦しさや声帯の摩耗に直結していくのです。
本当の正しいミックスボイスは、こうした筋肉の偏りが一切無くなった時、勝手にできるようになります。
動きの悪い筋肉が無く、全ての筋肉が自分の最も得意な仕事を存分に行っている状態、これが理想的なミックスボイスの状態です。
なんか理想の会社みたいですよね笑
一度この状態になってしまえば、楽にパワフルな高音を出すことも、地声と裏声を自由に行き来することも簡単にできるようになります。
つまり、ミックスボイスを手に入れたい人がやるべきは、ミックスボイスっぽい声の練習ではなく、喉の筋肉を満遍なく鍛えることなのです。
本当のミックスボイスを手に入れるためのメソッド「アンザッツ」
喉の筋肉を満遍なく鍛えるのに適したメソッドを、海外の偉大なボイストレーナーが既に考えてくれています。
それが「アンザッツ」です。
アンザッツは7種類の声を使って喉の筋肉を満遍なく鍛えるメソッドで、99.99%の人は必ず苦手な種類の声が存在します。
7種類の声全てがどの音域でもしっかり出せるようになることで、動きの悪い筋肉がどんどん無くなっていき、本当のミックスボイスが手に入るという寸法です。
アンザッツのやり方
アンザッツは1、2、3a、3b、4、5、6の7種類あり、全ての番号を満遍なく行うことで喉の筋肉を鍛えることができます。
アンザッツ1番
甲状舌骨筋と声帯閉鎖筋を鍛える番号です。喉仏を上げるのがポイントなので、コミカルで鋭い音質の地声を「イ」や「エ」で発音することで出すことができます。
アンザッツ2番
喉仏を引き下げる胸骨甲状筋と、声帯閉鎖筋を鍛える番号です。「喉を下げる」という、声帯閉鎖と相性が悪い動作をしながら強い声を出す番号なので、声帯の閉じ過ぎを防ぎ、リスク少なく声帯閉鎖筋を鍛えることができます。
「オ」母音などを使って、オペラ歌手のような太い地声を出すことで練習できます。
アンザッツ3a
声帯筋という声帯辺縁部の筋肉を地声で鍛える番号です。息を堪えずに流れた状態を保ったまま、強烈なインパクトを持った「ア」を発音することを目指すことで出すことができます。
アンザッツ3b
声帯筋を裏声で鍛える番号です。裏声体感のまま「ア」を強く出すと共に、喉仏を固定する全ての筋肉を参加させます。
喉仏は上がりすぎない中間の位置を取り、音質は鋭さと大人っぽさを両立した印象になります。
アンザッツ4番
喉仏を耳の方へ引っ張る口蓋咽頭筋と、声帯を伸ばす輪状甲状筋を鍛えます。声を飛ばす方向がとても大事で、決して前方向に発声してはいけません。
息はしっかりと流した上で、斜め後ろ上方向に柔らかな音質の「フ」の裏声を発声することで出すことができます。
アンザッツ5番
裏声に甲状舌骨筋を参加させる番号です。4番と違い、前方向に発声します。
前方向に発声すると喉仏上がって声帯が閉鎖しやすくなるので、音質は4番よりハッキリします。
息の流れをしっかり確保したいので、「ホ」で広めにスペースを取りながら行うと良いでしょう。
アンザッツ6番
4番に喉仏を下げる「輪状咽頭筋」を参加させる筋肉です。喉仏を下げてパワフルに出す4番と思ってください。
音質は4番と同じで柔らか丸い音質ですが、4番よりも深みがあります。
全てのアンザッツを使いこなせるようになることで、喉仏の固定を甲状舌骨筋だけ頼らなくても良くなり、全ての筋肉がリラックスしてパフォーマンスを発揮できるようになります。
これが正しいミックスボイスを手に入れる道筋です。
アンザッツを詳しく知りたい方はこちら!
よくある質問(FAQ)
Q1. ミックスボイスって結局どんな声なんですか?
A. 実は「ミックスボイス」という特定の声は存在しません。地声や裏声をバランスよく行き来できるようになったときに自然に生まれる“状態”を指しています。
Q2. ミックスボイスを出すために「ミックスボイスっぽい声」を練習すればいいんですか?
A. いいえ。喉を締めたり特定の筋肉だけに頼る発声になるため危険です。結果的に喉を壊したり、声帯を摩耗させてしまう恐れがあります。
Q3. プロ歌手みたいに自然に高音を出すにはどうすればいいですか?
A. 特定の声を真似するのではなく、喉の筋肉をバランスよく鍛える必要があります。そうすることで全ての筋肉が自分の役割を果たせるようになり、楽にパワフルな声が出せるようになります。
Q4. 具体的にどんな練習をすればミックスボイスが身につきますか?
A. 「アンザッツ」という7種類の発声トレーニングが有効です。苦手な声を含めて全種類を練習することで、動きの悪い筋肉が改善され、本当のミックスボイスの状態に近づけます。
Q5. アンザッツをやるとどんな変化が期待できますか?
A. 喉仏の固定を特定の筋肉に頼らなくなるため、全ての筋肉がリラックスして働きます。その結果、高音が無理なく出せるようになり、地声と裏声を自由に行き来できるようになります。
まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ミックスボイスを出したいと考えている方にとって、つい「それっぽい声」を追いかけたくなってしまうものですが、本当に大切なのは喉全体の筋肉をバランスよく鍛えることです。
焦らず一歩ずつ取り組んでいけば、必ず自然な形で理想の声にたどり着けます。
今回の内容が、みなさんの練習のヒントになれば嬉しいです!
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