みなさんこんにちは!
WACCA MUSIC SCHOOLです。
今回はボーカル練習でよく話題になる「C5 音域」について解説していきます。
ボイストレーニングをしていると「C5 音域が出せた!」とか「C5 音域が苦しい…」といった声を耳にしますが、そもそもC5とはどんな高さで、どのくらい難しいのでしょうか。
生理学的な角度から解説していきます。
C5 音域はどんな高さ?
C5とは、ピアノで「真ん中のド(C4)」の1オクターブ上にある「ド」です。
「hiC」という表記がされることもあります。
周波数で表すとおよそ523Hz。つまり「C5 音域」とは、この高さを中心に歌えるかどうかを指す言葉として使われています。
世界三大テノールに名を連ねる「ルチアーノ・パヴァロッティ」が「キングオブhiC」と呼ばれているように、C5が出せるかどうかが、歌手としての「格」を決定する場合もあるほど象徴的な音程です。
C5音域はなぜ難しいのか
C5は裏声で出すならそこまで難しくなく、おそらくほとんどの方は出すことができます。
しかし、地声で出すとなると至難の業です。
男性は言うに及ばず、女性でも日頃から歌を歌っている人でないとなかなか地声で出せない音程です。
なぜそんなに難しいのかというと、理由は音程を上げる仕組みにあります。
音程を上げる仕組み
我々の声は喉仏の中にある「声帯」で作られており、音程は「声帯の厚み」によって決まっています。
声帯が分厚ければ低い音が鳴り、声帯が薄ければ高い音が出ます。
ギターなどの弦楽器をイメージしてもらっても、細い弦の方が高い音が出ますよね。
それと同じ原理です。
声帯の周りには「声帯を引き伸ばす筋肉」が色々ついており、声帯自身は縮む運動ができるので、引っ張る運動と縮む運動の割合を微妙に調整することによって、声帯の厚みを調整することができます。
我々がイメージするだけで音程を上下させることができるのは、この「引き伸ばす運動」と「縮む運動」の自動的な調整が瞬時に行われているからなのです。

地声・裏声の定義
音程が声帯の厚みによって変化すると言いましたが、地声と裏声も声帯の厚みによって決定されています。
声帯の厚みがある一定のラインを超えて分厚くなれば地声になり、それ未満なら裏声になるという仕組みです。
音量や音質は地声と裏声の定義には関係が無いので、誤解しないようにしましょう。
高音を地声で出すという矛盾
地声を保つにはある一定以上の声帯の分厚さが必要なのに、声帯を薄くしないと高音が出ないということは、「高音を地声で出すという行為自体がそもそも矛盾している」ことを示しています。
だから高音の地声は出すのが難しいのです。
これは諸説ありますが、地声に聞こえる声帯の厚みをギリギリ保って出せる限界の音程はA4と言われています。
つまりA4より高い音程はどう足掻いたところで裏声になってしまうということです。
しかしそれではA4より高い音を地声のように出しているプロのアーティストの説明が付きませんよね。
ご安心ください。
実は音程を上げる方法は一つだけではありません。
もう一つあるのです。
より強い息を当てて音程を上げる
声帯を薄くすることによって音程が上がるのは、薄くなることで声帯の振動回数が増えるからです。
声帯の振動回数さえ増えれば良いのだから、伸ばして薄くしなくても、より強く空気を声帯に当ててあげれば振動回数は増すのです。
つまり、より強く声を出せば良いのです。
これがもう一つの音程を上げる方法です。
この方法を使えば、声帯を薄くしなくても音程が上げられるので、A4以上の高音も地声で出せるようになるというわけです。
高音域で息を強くするには強靭な筋力が必要
声帯に当てる息を強くすればA4以上の音も簡単に出せるというような書き方をしましたが、実際には全く簡単ではありません。
A4まで音程を上げている時点で、すでに声帯は地声を保つギリギリの薄さになっています。
その状態で強い息を当てようものなら、声帯はたちまち強すぎる呼気圧に吹き飛ばされ、発声が破綻してしまうでしょう。
地声をキープできるギリギリの厚みを保ったまま息を強くするためには、声帯に起こっている「伸長と短縮の戦い」の強度を極限まで高くすることで、声帯のテンションを強くしていかなければなりません。
そうすることで声帯は硬くなり、その影響で音程も上がり、強い呼気圧にも耐えられるようになるのです。
しかし、声帯に強いテンションをかけた状態を維持するには超強力な筋力、特に声帯を伸ばす筋肉の強さが重要になります。
なぜかと言うと、声帯を縮めて分厚くする運動は物を飲み込む動作(嚥下動作)の際に頻繁に行われていますが、声帯を伸ばして薄くする運動は意識的に行わない限り日常生活では行われないからです。
多くの人、声帯を伸ばす筋力よりも声帯を縮める筋肉の方が圧倒的に強いのです。
声帯の伸展には
- 輪状甲状筋
- 胸骨甲状筋
- 口蓋咽頭筋
- 輪状咽頭筋
- 後輪状披裂筋
主にこの5つの筋肉が関与しているので、徹底的にこれらをトレーニングしていかないと、C5を地声で出すのは難しいのです。
C5を地声で出すのが難しい理由が少しだけわかっていただけましたでしょうか。
C5を出せるようになりたいですか?
C5音域を操るアーティスト
Mrs.GREEN APPLE 大森元貴さん
1人目はハイトーンボイスで有名なMrs.GREEN APPLEの大森さんです。
ダーリン
この楽曲は地声最高音がC5#となっています。
ハイトーンが得意な大森さんだからこそ出せる音程です。
Official髭男dism 藤原聡さん
2人目はOfficial髭男dism 藤原さんです。
この人もハイトーンボイスで有名ですよね。
Pretender
この曲は地声最高音がC5で合計17回も登場するそうです。
余裕を持ってC5を出せないと歌えないとんでもない難曲です。
Da-iCE 花村想太さん
3人目は Da-iCEの花村想太さんです。
I wonder
この楽曲はライブだと全て地声で歌われていて、最高音はC5#です。
花村さんの高音はとにかく力強く、声帯の厚みをしっかり残せたままC5音域を出しているので、とてつもない喉の筋力と言わざるを得ません。
よくある質問
Q1. C5は裏声なら出せるけど地声だと苦しいのはなぜ?
裏声は声帯を薄くして振動回数を増やす仕組みなので、多くの人が比較的容易にC5を出せます。
一方で地声は声帯を分厚く保った状態で出す必要があり、高音と矛盾するため非常に困難です。
Q2. プロの歌手がA4以上を地声のように出しているのはなぜ?
強い息を声帯に当てることで、振動回数を増やしながらも分厚さを保てるからです。
そのためA4以上でも地声のように響かせることが可能なのです。
Q3. C5を出すためにどんな練習をすれば良いですか?
まずは裏声でC5を安定して出せるようにするのがおすすめです。
その上で段階的に息の量を増やし、地声の厚みを残す練習を積んでいきましょう。
Q4. C5を出そうとすると喉が痛くなるのはなぜ?
喉に力を入れすぎたり声帯を押しつぶす発声をしている可能性があります。
無理に力んだ発声を繰り返すと声帯を痛める原因になるので、息の流れを意識しリラックスして出すことが大切です。
Q5. C5を地声で出すために必要な筋肉は?
声帯を伸ばす役割を持つ輪状甲状筋・胸骨甲状筋・口蓋咽頭筋・輪状咽頭筋・後輪状披裂筋などが重要です。
これらを鍛えることで強い呼気圧にも耐えられる声帯をつくることができます。
まとめ
C5は裏声なら多くの人が到達できる高さですが、地声で出すには声帯を分厚く保ちつつ高音を響かせる必要があるため、非常に難易度が高い音域です。
プロの歌手がC5を地声のように歌えるのは、強靭な声帯筋と正しい発声トレーニングを積んでいるからです。
もしC5を自在に扱いたいなら、焦らず少しずつ声帯を伸ばす筋肉を鍛え、呼吸と共にコントロールする練習を積み重ねていきましょう。
ハイトーンボイスは一朝一夕では身につきませんが、努力次第で必ず近づけます。
東京のボイトレスクール「WACCA MUSIC SCHOOL」の無料体験レッスンはこちら!