WACCA MUSIC SCHOOL

お知らせ/コラム

毎月講師会、研修、発表を行いより良い教え方を共有し、成果の感じられるレッスンを行えるよう努めています。

【歌が苦しいのは腹式呼吸が原因?】正しい方法と練習のコツ

皆さんこんにちは!

WACCA MUSIC SCHOOLです!

「歌うと苦しい」「高音が怖い」「声が薄い」と感じるとき、その原因は呼吸の使い方にあることが多いです。

ここでは原文の説明をベースに、実際に効果のある練習方法やチェックの仕方、ありがちな失敗とその回避法をまとめました。

1. 腹式呼吸とは?歌との関係をわかりやすく解説

腹式呼吸は横隔膜を主に使った呼吸のことです。

肺は筋肉では無いため、自分から膨らむことができません。

そのため、肺が入っている「胸郭」そのものの体積を増やすことで肺を膨らませています。

胸郭の体積を増やす方法は大きく分けて
①肋骨を引き上げる
②横隔膜を下げる
この2つがあります。

この②の方法を使って肺を広げる方法を「腹式呼吸」と言います。

2. 腹式呼吸をマスターするメリット

メリット①【喉締めが改善できる】

腹式呼吸のメリットは、喉締めを改善できることです。

喉がギュッと締め付けられるように苦しくなる「喉締め」は、実は呼吸が原因であることが少なくありません。

先述した①の「肋骨を引き上げる」方法で肺を広げる「胸式呼吸」では、横隔膜ではなく肩や首の筋肉を主に使って肺が広げられています。

そのため、呼吸の度に首や肩に緊張感が積み重なっていき、「声を出す前から喉が締まっている」という状態になっていくのです。

一方で腹式呼吸だと、首や肩の筋肉は補助的な役割しか担わないので、喉締めが起こらないのです。

メリット②【声が響かせやすくなり声量が上がる】

腹式呼吸ができている人は、喉の空間を広げやすいことがわかっています。

横隔膜は別名「吸気筋」と呼ばれる、息を吸うための筋肉です。

そのため、横隔膜が働くだけで、体は「息を吸うモード」に反射的になります。

試しに息を深く吸ってみてください。

そうすると、喉仏が少し下がり、喉の奥がスーッと広がる感じがしますよね。

喉の空間が狭いと息が入って行きずらくなってしまうので、「息を吸う」という動作に合わせて、反射的に「喉を広げる」という動作も同時行われているのです。

その状態で発声すると、声帯で生み出された原音が広い空間で響くことになるので、耳障りの良い広がりのある声になり、声量も上がります。

呼吸と発声は無意識のうちに連動しているので、呼吸が変わるだけで発声も変化するのです。

メリット③【腹圧をかけやすくなる】

腹圧とは腹筋を絞めて体内の空気圧を上げることです。

腹圧がかかることで、強く声を出すことができるようになります。

腹式呼吸では横隔膜が下がってお腹が膨らむので、腹圧がとてもかけやすくなり、声量を簡単に上げられます。

一方で胸式呼吸ではお腹が膨らまないので、腹圧がかけにくく、声量が上手く上げられません。

声が弱々しいことで悩んでいる人は、胸式呼吸になってしまっていないか疑ってください。

3. 腹式呼吸の正しいやり方【初心者でもできる練習法】

意識的に腹式呼吸をすることはそこまで難しくありません。

息を吸ってお腹が膨らんでいれば横隔膜は間違いなく動いてはいるからです。

仰向け、もしくは前屈のどちらか好きな方で、お腹が膨らむように意識して呼吸してみてください。

反り腰傾向のある人は前屈がオススメです。

普段よりもお腹に空気が入る感じがしたら、その量を普段から吸えるように意識しましょう。

そうすると横隔膜の可動域がだんだん増えていき、次第に腹式呼吸が常態化していきます。

4. 腹式呼吸ができているか確認するチェック方法

やり方のところでお話しした通り一時的に横隔膜を動かすのは比較的簡単ですが、本当の意味で腹式呼吸ができているかどうかは別の話です。

自分が本当に腹式呼吸をできているかどうか判断する際には、横隔膜が動いているだけでなく、首や肩の筋肉が一切緊張せずに呼吸できているかどうかを確認するようにしましょう。

首や肩が緊張している感覚とは

胸式呼吸が常態化している人は首や肩が緊張している状態が普通になってしまっているので、何が緊張に当たるのかがわからないと思います。

誰でもわかりやすく胸式呼吸になるのは「鼻を啜った時」です。

鼻を啜ると、鎖骨の辺りや肩がこわばるのが感じ取れますよね。

これが胸式呼吸の時の緊張です。

首・肩を使わずにお腹だけで8割吸えるか

次に、首や肩のこわばりが無いまま、何割くらい息が吸えるのかを確認してください。

普段が胸式呼吸になっている人は、5割くらい吸うと首・肩がこわばり始めることが多いです。

つまり、理論上は4割までなら腹式呼吸だけで呼吸ができることになりますが、4割の中で呼吸をすると考えると、少し息苦しいですよね。

だから普段から胸式呼吸になってしまうのです。

普段から腹式呼吸を徹底するためには、首・肩を一切使わずに7.8割吸えるのが絶対条件です。

そこまでは呼吸のトレーニングを駆使して、横隔膜の可動域を増やしていってください。

もっと簡単に確認する方法

仰向けに寝て、片方の手をみぞおち、もう片方を下腹部に置いて呼吸してみましょう。

下腹部からみぞおちへと順にふわっと広がる“波”を感じられれば理想的です。

もしみぞおちが先に広がるようなら胸式呼吸が優位になっているかもしれません。

吸う時間は2秒、吐く時間は4秒以上を目安に、静かに繰り返してみてください。

セルフチェックリスト

・吸うときに鎖骨が上下していないか鏡で確認する

下腹部→側腹→背中の順に360度で広がっているかを感じる

・吐くときに胸を落とさず、お腹まわりだけが萎んでいるか

・会話程度の声量で30秒以上ロングトーンが安定して続けられるか

・吸う量は「8割」を上限に、毎回同じ量にできているか

腹式呼吸をマスターしたい方はこちら!

5. 腹式呼吸を使った歌の練習法(実践編)

腹式呼吸を歌に応用するには、段階的な練習が効果的です。

まずは「リップロール」で唇を震わせながら息を吐き、次に「ハミング」に移行し、最後に母音「あ」で声を出す練習を行います。

歌詞を4〜6音節ごとに区切り、どこで息を吸うかを譜面に書き込むと効率的です。

メトロノームを使って、吸う拍は1拍分、吐く息は2〜4拍をかけるように練習すると安定します。

子音が多い曲では母音の響きを先に立て、その上に子音を軽く乗せる意識を持つと、息の無駄を減らせます。

高音を出すときは軽くあくびをしたような体勢を作り、背中側に息の通り道をイメージして発声しましょう。

また、8小節単位で「吸う位置・量・目的」をメモして、無駄な吸気を減らすことも有効です。

6. 腹式呼吸ができない人によくある失敗と解決法

練習の中でつまずきやすいポイントは、原因を理解して直すと一気に改善します。ここでは代表的な5つを、理由と直し方までまとめて説明します。

肩が上がってしまう

肩や鎖骨が動くのは、首まわりの筋肉で胸郭の上部を持ち上げる「胸式優位」になっているサインです。

この状態だと首・喉に余計な緊張が入り、発声前から喉が固くなります。

対策は、吸う前にいったん3秒ほど静かに吐くこと。

肺の余剰な空気を抜いてから吸うと横隔膜が自然に下がり、下腹部と側腹がふくらむ「腹式」に切り替わりやすくなります。

鏡で鎖骨が動かないか確認しつつ、吸気中はお腹と脇腹の広がりだけを感じるようにしましょう。

腹圧をかけすぎて苦しくなる

前だけ(腹直筋)で強く押すと、みぞおちが固まり胸郭が落ち、息の圧が一気に上がって喉の抵抗も増します。

結果、声は張れるのにすぐ苦しくなり、音程も暴れやすくなります。

理想は360度の支えです。

おへそ下を「前後」から軽く支え、側腹と背中にもわずかな張りを作ります(腹横筋のコルセット感)。

みぞおちを凹ませ過ぎず、「ベルトを外からやさしく押し返す」程度の圧でキープすると、息の供給が安定して喉の負担が減ります。

息が余る/不足する

フレーズに対して吸う量の見積もりが合っていない状態です。

子音は空気消費が少なく、母音が長いフレーズほど空気を使います。

にもかかわらず感覚で深く吸い過ぎると余って漏れ、逆に浅いと途中で足りずに喉で我慢することになります。

まずは歌う前にフレーズを有声子音(z や v)で鳴らして消費量をざっくり把握し、必要最小量(体感で7〜8割)だけ吸う癖をつけましょう。

譜面や歌詞に「吸う位置」と「目的(延長/加速/着地)」を書き込み、毎回同じ量で入ると安定します。

音程が不安定になる

多くは息の流れと圧が一定でないことが原因です。

息の供給が波打つと、声帯の振動も揺れ、ピッチが上下しやすくなります。

改善にはストロー呼気10秒 → 同じ強さでハミング10秒がおすすめです。

ストローでの半閉鎖(SOVT)により口腔内に適度な背圧が生まれ、息の流量が均されます。

そのままハミングへ移行して同じ圧と流れを保つと、「一定の吐気で支える」感覚が声に直結し、ピッチが落ち着きます。

舌根や顎が緊張する

顎を噛みしめたり舌が奥に引っ込むと、喉頭が持ち上がって通り道が狭くなり、息の流れが阻害されます。

結果として高音が詰まりやすくなります。

対処はシンプルで、奥歯を1mmほど離す(上下の歯をそっと浮かせる)ことと、舌先を下前歯の裏に軽く添えること。

この二点で顎の噛み締めと舌根の引き込みが抑えられ、咽頭腔が保たれて息の通りがスムーズになります。

鏡で下顎が上下にカクつかないかもチェックしましょう。

以上の原因と対策を押さえたうえで、練習では「吸う前に静かに吐く」「7〜8割だけ吸う」「360度の支え」「一定の吐気を維持」の4点を合言葉にすると、腹式呼吸は短期間で安定していきます。

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7. まとめ:腹式呼吸で歌は必ず上手くなる

腹式呼吸は「量」よりも「質」が大事です。

肩を使わずに360度で息を受け止め、吐く息を一定に支えられるようになると、喉は自然と自由になります。

毎日10〜15分の練習を積み重ねれば、短期間でも歌声に大きな変化が現れます。

声量や安定感、高音すべてに良い影響が期待できますので、腹式呼吸を味方につけて練習を続けてみてください。

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